高田馬場のさかえ通りのさらに路地裏という、まさに場末と呼ぶにふさわしい焼きとん屋で、頼んだラタトゥイユが激うま。この店はただものではありません。
ここは納豆入り玉子焼きも絶妙です。
外はふわっとしてて中はとろっ、納豆もとろっ。えもいわれぬ食感の良さにほっぺたが緩んでしまいます。この味を再現したいと自宅で何度も格闘したのですが、どうしてもできません。絶妙な火加減があるのでしょう。
高田馬場の飲み屋街として君臨してきたさかえ通りですが、ここ数年火事が相次いでいます。燃えた建物に入居していた店が立ち退いた後は更地となり、その後専門学校のコンクリート校舎が建つなどして徐々にその姿を変えてきました。
そうしたなかでこの店は昔ながらの古い木造建物にある店。店内は狭く、8人ほどのⅬ字カウンターに狭い小あがりと、2人掛けのテーブルが2つがひしめき合っています。
やきとんの店となっていますが、食べてほしいのはやきとん以外の日替わりメニュー。
最近登場した「レバ刺し」は、生レバー提供禁止を受けて開発したもの。低温調理(真空調理とも言う)によって、たんぱく質が硬化せず、なおかつ殺菌できる温度で調理したことで提供できるようになりました。味は生というわけにはいきませんが、レア気味でおいしいのでもしあったらぜひ頼んでみてください。
また、「鯨肉のユッケ」も牛の生肉の提供が禁止されたことを受けてのメニュー。鯨も哺乳類であり、昔から刺身で食べられてきましたから、ユッケにしてまずいはずがない。これもメニューに載っていたら即注文です。
馬や鯨が良くて、なぜ牛だけがダメなのか、厚生労働省はいまだに納得いく説明をしていません。単に「羹に懲りて膾を吹く」かのような責任逃れ的施策ではなく、ある程度の自己責任を覚悟させた上での多様な食文化を守っていってほしいものです。
定番メニューでは、客の半分以上が頼んでいるポテトサラダ。
よくあるマヨネーズまみれのべたべたしたものではなく、ジャガイモの食感がしっかりと残り、ほかの具も豊富に入っています。ハーフが注文できますので、ひとりのときも便利です。
ふらっと入って、その日のお勧めを見て、旬を味わう。
こうした居酒屋の楽しみは、こうした小さな家族経営の店だからこそ。
巷では「総合居酒屋は終わった」なんて言われてますが、終わったのは「総合居酒屋チェーン」であって、「街の居酒屋」ではないはずです。
この店の隣には以前、めちゃめちゃにうまい魚を出す店「まずい魚 青柳」があったのですが、駅を越えて反対側に新しい店を構えました。この店もどうやら立ち退きを迫られているようで、この店の雰囲気を味わえるのはもう少しかもしれません。
ひとり飲みたい気分で高田馬場に降り立ったとき、まず行くべき店だと強く推奨します。
「とん八」(高田馬場・居酒屋)
https://tabelog.com/tokyo/A1305/A130503/13040861/