和菓子屋だと思っていた、この店。
ある日の昼時、店の前に立っていたサラリーマンたちの会話を聞き、衝撃を受けました。
「店内はやっぱりきょうも満席かぁ…。」
「そうだよな、みんな、伊勢屋に行きたいもんな。」
この店は、高田馬場駅から早稲田通りを東に向かい、明治通りを越えてすぐのところ。
草餅や柏餅と一緒に、稲荷寿司や巻き寿司も売られる典型的な東京スタイルの和菓子店です。
店内に椅子とテーブルが並べられているのは知っていましたが、甘味とせいぜいうどんくらいを提供するのだろうな、くらいにしか考えていなかったのです。
ところが、「みんなが行きたい」というサラリーマンのセリフ。都内屈指のラーメンストリート・早稲田通りにあるのですから、まわりにはラーメン屋と安いメシ屋は腐るほどある地域なのに、です。
意を決して入ってみました。
すると、驚いたことに店内の主力はラーメン。
タンメン、もやしそばなどのバリエーションのほかは焼そば、チキンライス、親子丼、カレーライス。当然あるはずだと思っていたうどんがありません。
タンメンを頼んでみました。
出てきたのはたっぷりの野菜で埋めつくされた正統派タンメン。しっかりとしたスープの味がまず印象的で、脂身のついた肉がいい味を出しています。そこらへんのラーメン屋よりもはるかに上、ラーメンストリート・早稲田通りでも決して引けをとらない、いや、優に上回るレベルのタンメンです。
ラーメンもまた昔懐かしいいわゆる“支那そば”風。
甘辛さがちょうどよく、チャーシューもまた少し厚めでうれしくなってしまいます。
そして出色はチキンライス。
“よくぞここまできれいに生き残っていてくれた”と思わず叫ばずにいられないような、そんな古風な
いでたち。きれいに型抜きされたケチャップ色のごはんの中から7mm四方ほどの鶏肉と刻んだ玉ねぎ、そして椎茸が顔をのぞかせ、いい風味を出しています。
もちろんグリンピースもしっかりと埋め込まれ、脇には福神漬。味噌汁までついています。
ぜひ懐かしさにひたりながら、味わってみてください。もちろん、チキンライスなんかに郷愁など抱かない世代の人々にとっても味わってほしい一品です。
とにかく、この店のおすすめはタンメン。
サラリーマンたちの言葉に、嘘はありませんでした。知られざるタンメンの名店が、ここにありました。
早稲田通りに立ち寄った際には、ほかのラーメン屋を押しのけてでもぜひぜひ食べてほしいタンメンです。
「伊勢屋」(西早稲田・ラーメン/食堂)
https://tabelog.com/tokyo/A1305/A130504/13010885/