久々に、心を鷲掴みにされるカレーに出会いました。
最初に感じる甘さとしっかりとしたコク。そして激辛キーマからくる痛いような辛さ。
「ボンディ」のようないわゆる欧風カレーの範疇にありながら、さらに深いコクと刺激が舌と心を捉えて離しません。
煮込むのにビールをふんだんに使っているといいますが、スパイスそのものの使い方が絶妙で、しかもクリームでマイルドにするなど、このカレーを生み出した人物は只者ではないはずです。
この店があるのは築地。
日比谷線築地駅のすぐ西にある京橋築地小学校の西の角の向かい。
ドイツ料理専門店がランチタイムに出すカレーが評判になったというわけです。
ランチは、チキン・ビーフ・ソーセージ・キーマに、今週のカレー。各890円。キーマは激辛で、初めての客には勧めないとのこと。
私が頼んだのは「ソーセージカレー」の「中辛」(+150円)に「ザワークラフト」(150円)をトッピング。
「中辛」というのは通常のカレーソース(ルー)にキーマを混ぜたものだそうでどのくらいの辛さになるのか楽しみです。
店内はごちゃごちゃとしていますがドイツっぽさがあり不快さはありません。ここでビールをがぶ飲みしたら楽しいだろうなぁ、と妄想を巡らせます。
そこでカレーが登場。大きな黄色い皿には山盛りのライスがあり、その上に卵くらいの大きさのマッシュポテトが。脇にはザワークラウトが多めに乗っています。
もうひとつの耐熱容器には白いものが。カレーのはずですが全面にクリームがかけてあり、大きめのソーセージが横たわっています。
まずスプーンですくうとクリームの下からこげ茶色のカレーが現れ、底にはキーマのものらしき粒つぶが。
ご飯にかけて口に入れると意外にもまず甘みがやってきます。そしてスパイスの香りが口いっぱいに広がり、最後に強烈な辛さが。唐辛子の辛さというより山椒のようなしびれる感じが前面に出ていて、水で流し込もうとするとむせるほど。
しかしコクのあるうま味がそれを上回り、スプーンを持つ手が止まりません。ご飯の上のマッシュポテトはほのかに甘く、辛さにしびれた舌を休ませるのにちょうどいい。
一方でザワークラウトは本格的な酢漬けではなく、塩揉みしたキャベツを酸味のあるドレッシングで和えた感じ。まったく日本的で肩すかしを喰らいます。しかしこれはランチだけで、カレーに合わせているのでしょう。もしこれが夜も出たらドイツ人もびっくりです。
しかしまあ、ドイツ料理店とは思えない高度なカレーには驚きました。インドを支配下に置いた大英帝国と違い、ドイツにはカレーの文化がありません。
本来は鮮度の落ちたビールの活用法として始まったカレーなのでしょうが、コロナ第5波で酒類提供ができないなか客に出せないまま鮮度の落ちたビールを使っているのだとしたら悲しすぎます。
一日も早く、この空間でたくさんの人々が杯を酌み交わし、賑やかな声で溢れる日が来てほしいものだと思います。とにかく、この魅惑のカレーはぜひ一度味わってみてください。
「ピラミッド」(築地・ドイツ料理)
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