【閉店しています】
店主が交通事故に遭い、足を複雑骨折をしたため長い休業が続いていましたが、無事に復活しさらに独自の料理を極めつつあるようです。
上の写真は「真鱈の白子ムニエル」。
正直、白子の類は個人的に好きではないのですが、この一品だけは違いました。たぶん新鮮なのでしょう、白子をさっと加熱し醤油ベースのソースをかけただけなのですが、ふんわりとしたコクのあるうま味が口に広がります。独特の臭みもエグ味もなく、ただただふくよかな味わいに感動すら覚えます。
ここは以前からこんな感じで一品一品丁寧なつくりで独自の味わい。
店名に冠してある「和魂洋菜」の通り洋風メニューに和の技術とテイストを加えた独自の料理が、食文化があまり高いとは言えない広島ではとくに異彩を放ってきました。
その昔、この店は繁華街の中心にありました。小さな店の中心に調理場があり、それをぐるっと囲むカウンターと店の奥の小さな4人席だけ。当時、ある件で主人に話があって訪れた時は、閉店までまったく客が途切れず、ずっと話しかけられずに待っていた記憶があります。
ところが10年ほど前に繁華街の中心から少し離れたビルの2階に移転。ビールの営業担当者の誘いに乗った形での移転だったようですが、やはり飲食店は場所が命。以前の賑わいはなくなってしまいましたが、ゆとりある店は隠れ家として重宝する存在でした。
しかしその後しばらくしての交通事故。複雑骨折の厳しいリハビリもあり、長期にわたる休業を強いられていましたが、相手が全面的に悪かったこともあって無事こうして営業を再開しました。しかも休業期間を使ってメニューも一新、さらに一段上の店となりました。
この店の料理の特徴を簡潔に表現するとしたら、火加減に誤りが一切ないこと。そしておいしくするために手間暇を惜しんでないこと。
たとえば、刺身の盛り合わせに出てきたキスは、昆布で締めることによってキスの淡い風味・うま味をより強調し、生臭さをきれいに取り除いています。こう書くと簡単そうですが、ここまでの味に仕上げる技と手間は並大抵のものではないはずです。
それは「宮崎牛のメンチカツ」も同じ。ゴルフボールほどの小さなメンチカツなのですが、外側はかりっと内側はほんのり赤くと完璧な火加減。それゆえにしっかりとうま味が凝縮されています。
しかも私たちが食べたものはフォアグラが入っていましたが、これはコースの一品に入っていた場合のサービスなのか、これもまた意外な組み合わせに驚きました。
とにかく、繰り返しになりますがその手間暇かけた料理のひとつひとつは感動的。しかもそれでいて値段は良心的です。
以前の名物メニュー「アイヌ風パスタ」が消えたことがちょっと寂しい気もしますが、まああれは鮭フレークと塩昆布があれば家庭でもできなくはありませんから良しとしましょう。
正直、広島にはもったいないとすら思えるレベルの店。東京にあればまた通い詰めてしまいそうです。
ムーミンのようなほがらかなご主人と、控えめながら行き届いたサービスをしてくれる奥様の笑顔も含め、ぜひ一度、訪れて味わってみてください。
「ふうらい房」(広島・洋食/居酒屋)
https://tabelog.com/hiroshima/A3401/A340101/34005719/