新宿のはずれで、とんかつ定食が810円。
細い細いカツですがちゃんとした肉でおいしく、新宿でこの値段は立派。昼どきには周辺から多くのサラリーマンが集まりにぎわっています。
細いカツをいつくしむようにして口に入れ、ご飯をかき込んで満足感を得る。物価上昇率目標2%に向け、モノの値段が徐々に上がっていこうとしている現在、ある意味仕方がないのかもしれません。
この店も、10年ほど前に行ったときの写真が見つかりました。
…やっぱり昔のほうが、大きい。というか太い。
店としても、諸物価が上がっていくなかでできるだけ値上げせずに提供したいと頑張った結果こうなったのでしょう。まあ褒められこそすれ、文句を言われる筋合いはないはずです。
この店があるのは新宿のはずれ、三番街という名の商店街。狭い路地の両側に小さな個人経営の飲食店が並ぶ、オフィス街のオアシスのような場所。
三番街の入り口に近いこの店は、昔ながらの小さなとんかつ屋といった風情。いまどきとんかつ屋もやたら豪華になったりチェーン化したりしていますから、こういう店はほっとします。
客はやっぱりほとんどが男。狭い店内にひしめくあうようにして座り、ただ黙々ととんかつを頬張っています。
この店で、かつ丼を頼んでみました。
漬物と味噌汁がついて、これも810円。さすがに昼のピークにこれを頼むのは申し訳ないので、午後2時近いやや空いた時間に。810円と、とんかつ定食と同じ値段で提供するのですから、卵などの材料が増えるのと手間がかかる分がどうなっているのかが興味ありました。
驚いたことに、カツがまったく違いました、
ある程度の厚みがある分、細かったとんかつ定食のカツに対して、かつ丼のカツは薄いのです。「紙」とまではいきませんが、衣のほうが厚く見えるくらいです。
でもその代わり上から見た面積は大きく、丼を覆いつくすだけの大きさが。見た目の豪華さは大したものです。卵も多くなく、ややしょっぱい感じの味付けですが、相応に満足感はあり、おいしく食べられました。
パークシティ伊勢丹1という巨大駐車場のすぐ裏の路地にある、小さなとんかつ屋。
長く物価が上がらない時代が続いたあと、デフレ脱却の旗印のもとで大きく変わろうとするなか、ささやかな抵抗を続けているかのようなこの店。
これからも安くおいしいとんかつを提供し続けてほしいものです。
「かつ銀」(新宿三丁目・とんかつ)
https://tabelog.com/tokyo/A1304/A130401/13012127/