この店は、私の学生時代からあります。
私が4年生のとき、若いあんちゃんがこの店に入ってきました。
「ちびまる子ちゃん」のブー太郎に似たそのあんちゃんはやっぱりトロくて、先輩コックに怒られてばかり。私はその姿を見て内心おもしろがっていました。
ところが私が就職して3~4年たったころ、久しぶりにこの店に訪れてみると、ブー太郎のあんちゃんは一人前になっていて、新入りの若者を叱り飛ばす立場になっていました。
一方で私はまだ社会人3年目くらい。とても一人前と言える立場ではありません。なにかブー太郎と私の立場が逆転したかのようで寂しい思いになったことが、きのうのことのように思い出されます。
さて、この店の名物はなんといっても「スタミナ焼きランチ」。
豚バラ肉をキャベツやにんじんなどの野菜と炒め、甘辛いたれで味を付けたあと、生卵を落としただけ。一見、なんの変哲もない肉野菜炒めですが、これが絶妙にうまいのです。
ちなみに、この店のメニューはすべて「ランチ」。昼も夜も「ランチ」です。
しかも1976年(昭和51年)からずっと味が変わらないという凄さ。ラーメンですら、かつて隆盛を誇ったとんこつがここ数年で陰りを見せ、鶏ガラスープが人気を集めるなど流行り廃りがあるなかで、40年以上にわたって同じ味を提供し続け、それが支持され続けているというのは驚きです。
味噌汁とご飯がついて800円。メンチカツがつくと840円で、ライス大盛りがプラス100円。
100円も取るだけあって、ライスの大盛り具合も半端ではありません。
物価上昇によって徐々に野菜が減ってきたような気もするのですが、それでもなおこの「スタミナ焼き」は不動の一番人気。客の半分が頼む独占状態ですが、もちろんほかのメニューがないわけではありません。
二番人気は、豚バラ肉を胡椒で味付けした「ポークからし焼肉ランチ」(670円)。(写真はメンチカツ付き)
胡椒なのに「からし」と呼ぶのは、この名をつけた人が九州出身だったのでしょうか。九州は唐辛子のことを「胡椒」と呼び(例:柚子ごしょう)、胡椒のことを「からし」と呼ぶことがありました。
胡椒の辛さがピリッときて、ご飯が進みます。
また、「カリージャワやき肉ランチ」(670円)は、スパイシーなカレー味。同じ豚バラ肉で味だけ違うというところに、安さの秘密があるのでしょうか。
添えられたスパゲティもやっぱりカレー味。手抜きがありません。
そして「ジャンボ焼きランチ」(770円)。
豆腐を辛めに炒めたもので、この店にしては意外に値段が張ります。
しかしこのメニュー、どこかで見たなと思っていたら、東十条のローカルフード「からし焼き」にそっくりです。
からし焼きについては「味の大番」のページで解説し、その由来について大胆な予想を立てていますのでそちらをご覧いただければと思いますが、意外にもこの料理は浅草の北の方にもあったりと、予想を上回る広がりを持っているようです。
安く、手早く食べられて、野菜もたっぷりとれるという、まさに一人暮らしの若者たちの食生活を40年以上にわたって支えてきた「洋庖丁」。
とくにスタミナ焼きは永遠であってほしいものです。
「洋庖丁」(高田馬場・定食)
https://tabelog.com/tokyo/A1305/A130503/13012221/