「日本一のかつ丼」と呼ばれる割にはちょっと貧相というか…。
まあ800円だからこんなものと思うのか、西荻窪ならもっとコストをかけられるはずと思うのか、人によって違うのでしょうが。
西荻窪の「坂本屋」。
もともとニッポンの正しい中華の店だったのがかつ丼が評判になったおかげで、ランチは客の9割がかつ丼を頼む店になってしまいました。
それでもなお、かつ丼専門店にならないのは、夜はほかのメニューが出ることと中華の料理人としての矜持のせいでしょうか。
店頭のショーケースのサンプルでも、かつ丼がいちばん下に置かれているところに意地のようなものを感じます。
カツは薄めでサクサク。脂身多し。
注文が入るたびに衣をつけ、4~5枚をまとめて中華鍋で揚げていきます。揚げるのはご主人、その揚げている枚数を確認し、玉ねぎをだしで煮込んで卵でとじるのは奥さん、という完全分業制です。
しかし店の外に行列があって、その9割がかつ丼を注文することがわかってるのですから、見込みで連続生産をすればいいのにと思ってしまいますが、これもまた料理人としての矜持なのでしょうか。
ただ、午後2時で行列は5人。
立って15分待った上に着席したあとさらに20分も待たされるのはなかなかの苦痛です。せめて他店のように行列中にメニューを渡し注文を受け付けるくらいはしないと、行列はあっても実際の回転数は低いままです。
卵とじ自体も非常にオーソドックス。
玉ねぎは多めでじっくり煮込んだ上に揚げたてのカツを乗せ、ゆるく溶いた卵をさっとカツの半分にかかるように注ぎます。白身がかたまり始めたところで丼のご飯に乗せ、蓋をして客席に。
かつ丼の王道といった感じですが、懐かしいのはグリンピースが散らしてあるところ。
グリンピースといえばかつては「ハイカラの象徴」であり、チキンライスやシュウマイなどその緑の粒があることが嬉しく、わざわざほじくって食べては幸福感にひたってました。その昭和の残像を見る思いです。
丼はごく普通の大きさですがご飯は詰め込み気味で多め。卵とじのだしは少なめのためほとんどのご飯は白いままです。薄いカツと1個分くらいしかない卵で食べるにはややバランスを欠いている気がしました。
ただ、製法同様に味もまたオーソドックス。だしも塩辛くなくまさにいい塩梅で、ほっとする味、と言えるでしょうか。
「日本一のかつ丼」だとは思いませんが、安心できる一杯として西荻窪周辺に寄る際には食べてみることをお勧めします。
「坂本屋」(西荻窪・かつ丼)
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