うにの手巻きです。
ごく少量のすし飯に二種類のバフンウニを重ね、海苔で手巻きにしたもの。
大将が手渡しでくれるこのうにのおいしさが、この店の最大の楽しみです。
神保町の駅から北に歩いて5分ほど。九段下の駅からなら8分ほどの場所にある新しい店。2016年10月の開店だそうですから、まだ1年半ほどです。
L字型のカウンター10席に4人掛けのテーブルが1卓ですが、テーブルは実際には使われていないよう。目の前で調理し、握ったものをそのまま出すのをポリシーとしているようです。
メニューはお任せのみ。開店直後は7,000円のサービス特価をやっていたようで、食べログなどでも評判になっていましたが、さすがにそれは終了。いまは名目上15,000円、実際はもうちょっと安い感じになっています。
今回のコース、最初の突き出しは白魚のづけ。づけにするとこんなにふくよかな味になるのかと驚きます。一匹一匹整えられ美しい。(ちなみにキティの皿は女将さんの趣味だとのこと)
続けて新玉ねぎのスープ。知人から送ってきたものだそうで、自然の甘さがすごくておいしい。
刺身の最初は、メヌケ。脂が乗っていてしっとりとしてうま味が濃い。
わかめ。おいしいわかめは単品として成立することを知る。
ホタルイカ。ボイルでなくて焼きです。わたがこぼれおちんばかりで、この濃厚なコクがたまりません。
ミズダコ。包丁を縦横に細かく入れて食べやすくしてあり、普通イメージするミズダコより食べやすいためか、味わいも深く感じる。
ツブ貝。もとはものすごく大きなもので、私がよく北海道で食べていたものとは全然違う。これも細かい包丁が入ってサクサクした食感。
あん肝。箸を入れるとほろっと崩れそうな柔らかさ。プリンのような弾力も。よくあるボロっと壊れる感じがせず、えぐ味もない。
タコの煮つけ。上のミズダコの吸盤の部分らしい。大阪出身の大将だけあって、上品な味付け。
カツオのたたき。上に乗せられた緑のものは葱のペースト。これが絶妙で、葱の香りで魚の生臭さを消し、うまさだけを引き出している。
タイラギ(平貝)の貝柱を焼いて海苔ではさんだもの。タイラギといえば有明海の潜水漁法を思い出しますが、これが有明海産かどうか聞きそびれてしまいました。
金目鯛の焼き。濃厚なうま味がたれによって引き出されてておいしい。
いくらの茶わん蒸し。蒸した後に乗せたものらしく、淡い味わい。
カスゴダイ(春子鯛)。身が柔らかくおいしい。
酢飯は赤酢を使っているため赤く、粒が硬めでひと粒ひと粒が立っている感じ。
今回いちばん印象に残ったのがこれ。最初、皮をはいでいるところを見て、アジかな、と思っていたのですが、実際はニシン。ニシンの刺身のイメージはなかったのですが、やはり青魚らしくうま味が強い。
マグロの赤身。濃い味のするいいマグロです。
マグロの中とろ。ふわっとした脂の乗り方が印象的です。
よっぽどおいしそうに食べていたのか、それとも普段ろくなものを食べてないのだろうと哀れまれたのか、もう一貫中トロを握ってくれました。しかもサクの端っこの三角の部分を。のしかかるように見えるこの塊のおいしいこと。
トリガイ。生のものは初めてかも。普通のゆでたものよりもエグ味もあり、食感も相まって複雑な味わいです。
アジ。先ほどのカツオにも乗せられていたネギのトッピングがここでも。これがもう猛烈にうま味を引き出してくれるのです。魔法のよう。
スミイカ(コウイカ)。身が厚く、ねっとりしつつもサクッという感じで切れ、うまみが濃いイカです。塩だけで。
そしてクライマックス、うにです。しかも2種類のうにを使い分けています。海苔をソフトクリームのコーン状に巻き、下には見た目が崩れているように見えるけど大将が「甘くてものすごくおいしい」というバフンウニ。そして上には見た目がきれいなバフンウニ。バフンウニを2種類使い分けるなんて恐ろしく贅沢です。
ほんのひと口ですが、至福の味としか言いようがありません。
おまかせは一応ここで終わり。
赤だし。これも魚のだしがみっしり入っていて濃厚なうまさ。具らしい具はないのですが、濃い味だけで充分とため息が出てきます。
ひととおり終わって、残ったネタを見せてもらうとアカガイが。
包丁の入り方が現代彫刻のようで美しく、この包丁のおかげでさくさくっとかみしめることができます。
のどぐろ。昔はわが家の味噌汁に普通に入っていた魚でしたが、いまや高級魚。しかし高級魚と言われるだけのうまさはたしかにあります。にぎりにしてもそのうまさは変わりません。
で、本当にお腹いっぱいになって最後のデザート。シンプルな果物ですが、寿司を食べに来たのですから、ここにコストをかけてもらっても嬉しくない。ちょうどいい感じでした。
店内は非常に砕けた感じで、医者の同級生グループの定例的な飲み会や、大阪からの家族が揃って食事をするなど、格式ばった雰囲気がありません。
よくある、ただただ黙々と出された寿司を食わされ、4万円も払ってほんの40分で追い出されるような店とは違う、新しい店ならではのくつろげる雰囲気がここにはあります。
そんなに寿司に詳しくもうんちくを持っているわけではないですが、だからこそこの店は好きだし、ただただおいしものを食べて楽しむ店としてお勧めしたいと思います。
「鮨よしの」(神保町・寿司)
https://tabelog.com/tokyo/A1310/A131003/13201646/