ウチワエビって初めて食べたかも。
平べったく、その名の通り頭の部分がうちわのように丸いエビ。「入荷しました！」と店内に貼ってあったので頼んでしまいました。

けっこう時間がかかって出てきたウチワエビは塩焼き。頭から半分にかち割られ、断面からは白い身とオレンジ色の卵がびっしり詰まっている様子が見えます。ただ、食べるところはここだけ。断面からかぶりつくと身と卵がごっそり抜けてきます。

身は筋肉質な硬さで味も濃厚。「イセエビよりもうまい」と言う人がいるのもわかります。卵も甘くておいしい。1匹800円でちょっとしか食べる部分はありませんでしたが、満足しました。刺身もあるそうなので今度はそっちを。

この店があるのは福岡の親不孝通り。昔、この通りの北に水城学園という九州最大の予備校があり、浪人生が毎日この通りを通学するのでその名がついたとか。

その通りの真ん中あたりにあるこの店。古民家から取ってきたような、黒々とした太い木材が外装・内装にふんだんに使われ、落ち着いた雰囲気。カウンターの席は、古民家の梁をそのまま持ってきたかのような曲がった木の幹が使われています。

座ると同時に、店員が新聞見開きぐらいの大きさの、衝立のような巨大なメニューをテーブルに置き、怯ませてくれます。

ざっと見るとけっこう値段が高い。
「博多ゴマさば」2,300円に「天然鯛カブト煮付け」2,500円、「対馬マグロ刺」2,000円とか、この福岡でいったいどんな物がどれだけの量で出てくるんだ、と言いたくなるようなラインナップ。ただ、これらはいかにもヨソ者向けのメニューで、出張者なんかを狙ったもの。

隣の、いかにもな1人客のお兄ちゃんなんか勧められるままに刺し盛を頼み、続けてもつ鍋（2人前 2,800円）をハーフにできないかと相談して注文。見たら、3〜4人前はあろうかという豪華刺し盛りと、どう見ても2人前だろ？というもつ鍋が来てました。この人、1万円はむしり取られるな…。

実際、食べログでこの店を評価しているのはほとんどが出張で来た人です。まあ、東京の水準からしたら安いしそれだけおいしいでしょうから評価は高くなるんでしょうけど。

ただ、一見さん相手の店かというとそうでもなく、よく見ると地元の常連客もけっこういます。
メニューを読み込んでいくと手ごろなものもあり、大皿料理がおいしそう。そのなかから「魚の南蛮漬」(650円)と「春野菜の天ぷら」(780円)を頼みます。

結論から言うとどちらも大当たり。南蛮漬けといえば普通、小さな鯵ですが、出てきたのは大きめの半身を3〜4つに切ったもの。いわゆるさばみそなどで使われる大きさ。これが3つも入り、上品な南蛮酢に浸されています。添えられたピーマンもおいしく、これで650円は安いと思いました。

また、春野菜の天ぷらも衣が軽くてサクサク。たらの芽、大きめの椎茸、春菊、玉ねぎなど熱々を楽しめました。

これらの料理に、生ビール2杯と割と大きな鯖のカレー味の照り焼きが突き出しについて、しめて3,930円。まあ納得できる金額でした。

一見の客にとっては危険な店ですが、きちんと選んで頼めばお手頃価格でおいしいものが食べられる店。常連になるといろいろサービスが違ってくるようですので、何回か通ってなじみになってみたい店です。

「晴れたり曇ったり」（福岡天神・郷土料理）
https://tabelog.com/fukuoka/A4001/A400103/40001393/