一段低くなった場所にある大きな四角いカウンター。
その中心の囲炉裏では、燃えさかる炎のまわりを串に刺された魚が取り囲み、じりじりとその身を焦がしています。
なんとダイナミックな光景。
店ではこれを「原始炭火焼き」と呼んでいます。
焼き場の担当はひとり。
何十本も刺された串をひとつひとつ見て裏返したり移動したり。ポタリポタリと落ちていく油の雫を見るだけで、よだれが出てきそうです。
ランチの焼き魚定食、950円。
かじきまぐろ、鯖、ほっけ、鮭などから選べてご飯、味噌汁、お新香食べ放題。行列になるのもむべなるかなのコストパフォーマンスです。
中野駅の北に広がる、魑魅魍魎たる飲食店街。そのなかでひときわ大きく黒く威容を誇るのがこの店。
壁には鉄道用の大きな信号機がふたつも取り付けられ、正面には昔懐かしい白い駅名標が。
青森・津軽の郷土料理のこの店は、ここ中野で半世紀にわたって人々を郷愁に浸らせてきました。
今回、私が選んだのは沖めだい。それにとろろ(150円)をつけてみました。
出てきた切り身の分厚いこと。炭火焼きだけあって身がしっとりしておいしい。
たれが甘くなく、さらっとした醤油味が身のうま味を引き立てています。
ご飯もおいしい。
1杯目は魚で食べ、2杯目はとろろで食べるという、理想のおかわりができました。
夜は純粋な郷土料理店となるようで、入口には「お一人様は十六時以降のご来店はご遠慮願います」の札が。井之頭五郎が立ち往生しそうです。
それにしてもややチープな飲食店が密集しているイメージのある中野で、このクオリティーで半世紀にも渡って郷土料理を提供し続けてきたこの店。
まずはランチでその片鱗を知り、気に入れば気の置けない仲間や大切な人と一緒に行ってみてはいかがでしょうか。ぜひ。
「陸蒸気」(中野・郷土料理)
https://tabelog.com/tokyo/A1319/A131902/13000216/