鯨の刺身にくじらカレー。
鯨をメインにした居酒屋ですが、それ以外のホヤや金華さばなど、東北の海の幸がどれもおいしい店です。
宮城県出身の先代が郷土の酒「浦霞」に惚れ込み、それまでの仕事をやめて開いた居酒屋ですから、宮城県鮎川で揚がる鯨をメインに据えたのは自然の流れだったのでしょう。
ブロイラーが普及する前の鶏肉は豚肉より高くて、いちばん安い肉は鯨肉でした。当時、給食にもたびたび出ましたし、居酒屋でも愛されていました。
ところが商業捕鯨禁止で鯨肉が安くなくなり、食卓から遠ざかるなかでその鯨を店の名物として守り続けることは大変だったと思います。
そうしたなか、鯨だけでなく鰻やフグなども加え、新たな展開をしようというこの店。久しぶりに来てみると味もけっこう変わった気がします。
くじらカレーは、短冊状の鯨肉がポロポロと入ってて、噛むと中からじゅわっと噴き出してくる感じ。よくある乾きもののサイコロ状のマグロのようで濃厚なうま味が印象的。
これで味噌汁とサラダがついて500円は安すぎじゃないですか?といったお得メニューです。
また、同じくランチの焼き魚定食の金華さばも小さいながらまるまる一匹。
一匹だと骨のまわりのいちばんおいしい部分がカジカジできるので嬉しい。
(水菜のサラダに何もかかってなかったのはご愛嬌)
そのほか、開店から17時までのいわゆるハッピーアワーのメニュー「ちょい飲みセット」は生ビールがジョッキで1杯に小鉢2品に唐揚げの小皿がついて1,000円とこれもまたお得。
この日の小鉢のアンチョビポテトがまたおいしくてびっくり。普通なら業務用の安いポテトサラダでごまかすところ、きちんとしたものを出しています。
「神は細部に宿る」という言葉を思い出しました。
一度、この店で本物の「ハリハリ鍋」を食べてみたいものです。
いまでこそ豚で作るレシピが溢れてますが、本来のハリハリ鍋は鯨肉。
自分で作ってみたことはあるのですが、本物を味わっておきたいと思うのです。
日本では産業としての捕鯨が始まって400年以上。座礁した鯨を食べたのはさらに遡って数千年前から。
みなさんもぜひ、日本人が愛し続けた鯨を味わってみてください。
日本人にとって、鯨を愛することと鯨を食べることは矛盾しないのですから。
「樽一」(新宿歌舞伎町・鮮魚料理)
https://tabelog.com/tokyo/A1304/A130401/13000109/