うわ。真っ黒。
黒い黒いと聞いていても、いざ現物を目の前にすると思わず声を上げてしまうほどの真っ黒さでした。
「孤独のグルメ Season2」第2話の人形町の黒天丼。
放送から8年もたつのに、ランチでは行列ができるというので、11:15の開店時間を目指してやってきた人形町。
「玉ひで」の行列を横目で見ながら路地に入り、角を曲がるとどーんと行列が。
お目当ての店ははるか向こうにあるというのに…。
行列の末尾から見て、店までの距離は10m以上。
いまだそんなに人気の店なのか?
仕方なしにそのまま末尾に並びながらもこのまま待つかどうか迷っていると、若いお姉さんが注文を取りにきます。前のほうで聞こえるのは「2個定食、3個定食どちらになさいます?」の声。
え?天丼ないの?メニュー変わったの?
頭のなかに「?」が渦巻くなか、列の前のおばさんに恐る恐る尋ねてみます。ここ、天丼の列ですよね?
「いえ、ここはカキフライの行列ですよ」
なんとこのくそ長い行列は、隣の店のものでした。小さい牡蠣を団子状に丸めた季節限定巨大カキフライが人気の店だとか。
列を離れて見ると、天丼の店は行列なし。
カウンターが1席ちょうど空いててすぐに入れてしまいました。
10分ムダにした…。
注文したのは、天丼のほかに単品でいかとはすといも。あら、めごちがない…。
ちょうど開店直後で注文がまとまってきたのでしょう。やや混乱ののち、いかとはすだけ先に。
はす(れんこん)の大きいこと。
天つゆは天丼用と違って普通の色。大根おろしと生姜が少しで、あまり甘みのない薄めの辛口。江戸前らしいすっきりとした天つゆです。
いかも幅広で柔らかくもちろん熱々。
そしていもも大きく厚く、食べごたえがありました。
九州だといもの天ぷらはウスターソースで食べるんですけどね。
そして天丼登場。わざわざ蓋がしてあるのは、その黒さに驚けるようにとの演出でしょうか。
しかしここまでの黒さは尋常じゃありません。濃い色の醤油を使い、さらに煮詰めて作っているのでしょうか。
ただ、だからといってしょっぱい訳ではなく、甘さとコクが印象的。その醤油のワイルドな香りと甘さは、九州・柳川の「鰻のせいろ蒸し」に通じるものを感じました。
黒いタネは、海老2本にキス、穴子、かき揚げにシシトウ。
どれも小さめではありますがきちんとしておいしい。
そして驚くのはその下のご飯が真っ白だということ。つまりタネを真っ黒にした天つゆは衣にくっついたまま下に落ちることがないのです。
濃い味のタネに真っ白のご飯の組み合わせがバランス良く、ワシワシと食べても飽きないものとなっていました。
自家製のお新香もおいしく、味噌汁もしじみでうれしい。1,200円(税別)でこれは満足感高いと言えるでしょう。
店を出て見ると、この店の前も4、5人の行列が。そして最初に間違って並んだカキフライの行列は相変わらずの10m。
私の前で並んでいたおばさんは、3mも動いていませんでした。ちょうど30分で3mということは、あのおばさんは2時間コース。そうまでして…。
それに引き換え、並ばずに堪能できた黒天丼は、見た目の異様さとは裏腹のしっかりした甘さとコクの上品な味。わざわざ人形町までやってきた甲斐のある一杯でした。
でも夜のほうが楽しそう。
ビール片手に単品の天ぷらや刺身をつまみ、ゆったり楽しんでみたいものですね。
「中山」(人形町・天ぷら)
https://tabelog.com/tokyo/A1302/A130204/13018093/