【現在は「仙令鮨」という名になっています】
かわはぎという魚が、これほどうまいとは知りませんでした。
上の写真は、かわはぎの握り。切り身の上には肝。ポン酢がかけられていて、そのまま口に運ぶと至福の味わいが広がります。
肝はアンコウの肝ほどくどくなく、しかし芳醇な味わい。身はほのかな甘みと意外にも濃厚なうま味があり、噛めば噛むほどうま味がほとばしり出てきます。
この店は仙台駅3階にある「すし通り」の中央あたり、いつも行列があることで知られる立ち食い寿司の店。
10人ほどでいっぱいになる直線のカウンターには3~4人の職人がいて、握ったものをすぐそのまま食べさせるというまさに寿司の原点のような店です。
経営するのは「北辰水産」という鮮魚店。百貨店などの食料品売り場で鮮魚店を多数展開する大手です。私自身、いい魚を買うときには必ず新宿の小田急ハルクの地下に行くのですがそこもまた「北辰」。道理で全国津々浦々のいいネタを扱ってるはずです。
ネタはそれこそ定番から見たことのないような魚まで実に多種多様。1貫ごとの値段がしっかり明記されているので、安心して頼むことができます。
まず驚いたのは、ぶどうえびがあること。しかも1貫600円と知りすかざず注文。
標準和名をヒゴロモエビというぶどうえびは、ぼたんえびを超えるおいしさとされるものの漁獲量が少なく非常に貴重なもの。甘みとうま味が強く、ぷりっとした食感もあって生で食べる海老としては確かに最高の部類です。1貫600円で食べられるのはこの店くらいでしょう。
また、北海道を中心に水揚げされる八角があるのも目ざとく発見。断面が八角形であることからその名がついた八角は、北海道でも焼魚にして食べることが多いと聞いていて寿司ネタとしての存在は知りませんでした。
出てきたものは鯛のような少し赤みがかった上品な色で、グロテスクな八角の外観からは想像できない美しさ。食べてみると少しねっとりとした舌触りですが、これもまた甘みとうま味があり、かなりいいネタです。
そのほか、ハタハタは軽くあぶったものに塩をふった握りや、時鮭を同様に炙って塩をふった握りなど、ありとあらゆるネタがこんな小さな店に揃っていることは本当に驚きです。
また、鯵などをたたいて味噌であえたなめろうもあり、軍艦巻きのほか単品として皿に盛って提供することも可能。ひと皿たった100円で、酒の肴としてしっかり楽しむこともできます。
立ち食いですから、新幹線の待ち時間にさくっと寿司をつまむもよし、じっくりいろんなネタを楽しみながら脚力の続く限り語らい飲むもよし。
ただ、ある程度並んで待つことは覚悟しなければならないようですが、それでも仙台に行ったなら必ず寄るべき店だと言えるでしょう。
「北辰鮨」(仙台・立ち食い寿司)
https://tabelog.com/miyagi/A0401/A040101/4000282/