写真は、一日三食限定「カニ汁定食」です。
ゆでたワタリガニ1匹に、半身が入ったカニ汁つき。さて、いくらでしょうか。
正解は、800円。
さすが海の近くとはいえ、この安さには驚きます。
カニの大きさは甲羅の幅が20㎝弱。身もしっかり入っていてお得感はたっぷりです。
ゆで加減はレアっぽく、刺身を食べているかのよう。最初ちょっと心配ではありましたが、産地ならではのゆで加減なのでしょう。味噌汁もまたカニのうま味がしっかりと溶け込み、いい味を出しています。
その他は充填式の豆腐とたくあんが付くだけで味噌や米がとりたてていいわけではないようなのですが、カニがうまければすべてうまい、といった感じで満足感溢れるメニューとなっています。
この店があるのは宮城県東松島市野蒜(のびる)地区。
東日本大震災による10mを超す津波で数百人の犠牲者を出し、ほとんどの家屋が流されるという壊滅的な被害を受けた地区です。
南に突き出た半島状のこの地区に、津波は東の太平洋から押し寄せます。名所と謳われた松林と家々をすべて押し流しながら津波は西の松島湾へ。野蒜はほとんど何もない状態になってしまいました。
一方、野蒜の西にある観光地・松島海岸は、津波の高さが約1mで、しかもひたひたと水が増えていく浸水だったために大きな被害はありませんでしたが、それは津波がこの野蒜を経由し減衰させられたため。
松島海岸の被害が軽微だったことについて、よく「松島の島々が守ってくれた」と言う人がいますが、実際は野蒜の多大な犠牲の上に守られたことを思うと複雑な気分になります。
その震災からもう1年半。
野蒜の、いまや一面の原っぱとなった被災地にぽつんと建つのが「カニ汁定食」を出す「海鮮堂」。
オープンしたのは震災のちょっと前で、そのころは野蒜の隣の宮戸島で養殖した牡蠣を焼いて食わせる牡蠣小屋だったとか。しかし津波で建物はかろうじて残ったもののリフォームに1年かかり今年4月にようやく再開。
「海鮮」の名を冠するものの、いまはまだラーメンやカレーなどの軽食や喫茶が主体で、現在はまだ一日三食限定の「カニ汁定食」が唯一の海のもの主体のメニューとのこと。
しかし、この11月からはまた牡蠣を食べられるようにしたいとのことですので、機会があったらぜひ皆さんも行ってみてください。
被災地観光でもいいのです。
被災した地域の人々におカネがちゃんと回っていくことが、本当の被災地支援になるのですから。
「海鮮堂」(宮城東松島・海鮮料理)
https://tabelog.com/miyagi/A0404/A040404/4013364/