京都のたぬきうどんです。
「関西ではきつねといえば、甘く味付けされた揚げが乗ったうどんで、たぬきは同じものが乗った蕎麦。なので、たぬきうどんなるメニューは関西には存在しない」。
ちょっと食文化に詳しい人ならみな知っているようなウンチクですが、実は京都ではまったく違います。
京都では「味付けされてない揚げが刻まれた状態でトッピングされているうどんがきつね。同じものが餡かけになっているのがたぬき。なので、たぬきうどんは普通にある」。
じゃあ、味付けされた揚げが乗ったうどんを京都では何と呼ぶのかと言うと「甘ぎつね」。
プライド高い京都は、大阪なんかの常識には徹底的に従いたくないのでしょう。
京都駅八条口から南にまっすぐ歩くこと5分。
政令指定都市の中心駅のすぐ近くというのに低層の住宅街が続き、こんなところに店なんかあるのかと不安になったときに突如現れる小さな店。
出てきたたぬきうどんは、褐色の餡の上にたくさんのおろし生姜と2種類のネギを乗せ、餡の下には柔らかい麺を包み込んでいました。
さっそく麺を引きずり出し、口に運びますがめちゃめちゃ熱い。餡が熱を遮断し、保温層となっているのです。
しかし甘辛い餡に生姜がとても合い、とてもおいしい。2種類(たぶん)のネギもそれぞれ風味が違いいいアクセントになっています。
揚げも素性がいいのでしょう。
刻まれてなお味わいがしっかりしています。これはおいしい。
見ていると客の半分はたぬきうどんを注文しています。名物になるのも当然と思えるおいしさでした。
ただ、この店を訪れたのはたぬきうどんを食べるためではありませんでした。
目的は、他人丼。
作家の百田尚樹氏がTwitterでうまい他人丼が京都の八条口からまっすぐの場所にあると書いていたので、推理しここを特定したのです。というか、八条口にはほかに店がなかったというのが事実ですが。
その他人丼。
1枚、大きな牛肉が象徴的に置かれ、ほかの小さめの牛肉や玉ねぎとともにとろとろの卵でとじられています。
肉質がよく、柔らかく仕上げられた牛肉の量は全体に多めで食べごたえあり。さすが肉じゃがが牛肉という牛肉文化圏ならではです。
細く刻まれた玉ねぎもくたくたでだしがきいてて、塩辛さはひかえめ。いい塩梅です。
いわゆるつゆだくなので、丼の底にわずかにだしがたまる状態で、ご飯すべてにだしの味が浸透。好みはあるでしょうがこのだしならつゆだくは歓迎したくなります。
しかし、事前調査ではたぬきうどんの評判が高く、店に着いてもほかの客が次々とたぬきうどんを頼むのを見て、つい他人丼とたぬきうどんの両方を注文してしまいましたが、さすがに最後はつらかった。
おかげで8時間たったいまもまったくお腹が空きません。
高校時代から20代までは軽くぺろっといけたのに、やはり寄る年波には勝てないことを痛感しました。
しかし京都ならではのたぬきうどん、
そして牛肉たっぷりの他人丼。
どちらも食べたからこそ強くお勧めできるというものです。
こんど京都に行くときには、こうした地元の人々が日常的に食べるものを食べてみてはいかがでしょうか。
ツンとおすましした京都が、一気に身近な街に感じられるかもしれませんよ。
「殿田」(京都・うどん)
https://tabelog.com/kyoto/A2601/A260604/26011323/