「お客さん、こないだはチャーシューメンでしたよね?」
お姉さんの一言にびっくりしました。
前回が土曜で今回が月曜。中一日とはいえ、1日何十人も来る客のうち初めて来た客の食べたものまで覚えているとは…。
この店があるのは淀橋市場。
大久保駅のすぐ外にある卸売市場のなかの飲食店。
このお姉さんは市場関係者の常連客を名前で呼び、その好みと過去に食べたものを覚えているのです。
実は私、この店のことをみくびっていました。
「孤独のグルメ」にこの店が出たのは、築地市場内の撮影許可が下りなかったためで、代わりに市場内の店ならどこでもよかったのではないかと。
しかしこの思い込みがまったくの誤解によるものであったことを、この店の代表的メニュー「豚バラ生姜焼」をひと口食べた瞬間に悟りました。
やさしい味。ひと言で言うと。
もっと生姜の風味がツンと尖ってて、たれも濃いかと思っていたのですがやや薄味で肉そのものも柔らかい。家庭の味で、ご飯が進みます。
小鉢のひとつ「トマトの酢漬け」もまた美味。
最初のひと口は甘さがきて次にツンっと酸味がきて、そして両者が合わさってうま味に変わる。
そんな不思議な味覚体験はほかでは味わえません。さすが青果市場にある定食屋です。
定食につく漬物も、おばさんがお盆に乗せて持ってくる6種類から選べるようになっていて、まるでフレンチのデザートのようです。
もちろん、淀橋市場の存在はずっと前から知っていました。
しかし築地や大田に比べて小さいし青果中心で地味なので、入ってみようとも思いませんでした。
実際、築地のような飲食店街はなく、2つの店があるだけですが、侮れないおいしさであることがわかります。
土曜に食べたチャーシューメンも、1cmの厚切りにされたチャーシューが5枚も鎮座しています。箸でほろっと崩れるほどの柔らかさ。
スープは醤油ベースの鶏ガラですがこれもまた柔らかい味。
麺もややゆですぎじゃないかと思えるほどの柔らかさですが、全体でみると統一感のある柔らかさでしょうか。
自家製の辣油を落とすと味が締まり、飽きずに食べられます。
ラーメンは木・金・土の限定で、まぐろ刺身定食は金曜のみ。
そしてカレーは月曜日限定。
そのほか日替わりも充実。
小いわしフライ定食は、サクサクの衣をまとった小さないわしのあまりに軽い食感に驚きます。
ここならちょくちょく通っても飽きることはなさそうです。
店名の「伊勢」は、創業者の出身地を表しているのでしょうか。だとしたら味付けの柔らかさも納得できます。
お漬物や味噌汁など、とにかく野菜のおいしさでは傑出。
気くばりの行き届いたお姉さんに会うのもけっこう楽しみになりそうです。
みなさんもぜひ。
「伊勢屋食堂」(大久保・定食)
https://tabelog.com/tokyo/A1304/A130404/13081288/