この店はときどき思い出したように行くのですが、そのたびにまるでジャパニーズ・ドリームを見るような思いに駆られます。
最初は、中国から来た料理人の主人と、その家族による本当の小規模経営。
メニューのなかの「+」が、漢字の「十」だったりして面食らいながらもほほえましく感じたものです。
料理も、炒め物の定食を中心に麺類が少しあるといういたって庶民的なラインナップで、料理人の腕をひけらかすという感じではありませんでした。
強いて言えば、新宿・しょんべん横丁の「岐阜屋」と同じ匂いを感じる店です。
そういえばこの店の「黒ゴマタンタン麺」も「岐阜屋」の「坦々麺」と同じで、芝麻醤(ゴマペースト)がほとんど入っていないタイプのもの。ニラとそぼろ肉が入るところも同じでした。
しかしこの店で食べるなら麺類よりも定食類のほうがおすすめです。
「黒酢のスブタ定食」は、その名の通り黒酢を使った酢豚ですが、大きめのニンジンと玉ねぎ、ピーマンと合わせ、甘く仕上げた黒酢のたれをからめたもの。日本で好まれるスタイルの酢豚になっています。
これに麻婆豆腐の小皿とごはん、スープ、杏仁豆腐のデザートがついて730円。かなり満足感は高いのではないでしょうか。
麻婆豆腐の小皿は以前、全然辛くなくてがっかりした記憶がありましたが、直近では辛いものに変更。客の要望に応えたのでしょうか。
また、「イカの黒胡椒炒め定食」(780円)は黒胡椒の辛味がほんのり効いていて、くどさが感じられないことに好感が持てます。野菜も酢豚同様に多く、あっさりとしていてお勧めです。
「上海風やきそば+水餃子セット」は、やきそばはまあ平凡なのに対し、水餃子は手作り感たっぷり。一度、これだけをたらふく食べてみたい気がします。
そうそう、麺類などにプラス150円でつけられる
半チャーハンはかなりおいしいので機会があれば。
店内は私が行き始めた当初からの簡素な雰囲気。テーブルも椅子も中古をかき集めたようなバラバラさで、色気はありません。テレビの下の衝立の裏にはスタッフの荷物などが山積みされています。
食べ放題・飲み放題のコースを始めたころから経営が上向いたのでしょうか、いまでは料理・サービスともにスタッフが雇われるようになりました。
中国料理は素材の鮮度に敏感な料理ではありませんし、調理法も比較的簡単なものなので、食べ放題などではかなりアドバンテージがあるのでしょう。
庶民的であることを貫き、見栄を張らずにこのまま私たちの味方として頑張ってほしい小さな店。
今回食べた定食のスープや麻婆豆腐がぬるかったのが慢心の現れでなければいいのですが。
「鳳美酒家」(渋谷・中国料理)
https://tabelog.com/tokyo/A1303/A130301/13117990/