「桜田門」が警視庁を指し、「代々木」が共産党を指すように、「天現寺」という地名は当時の私たちにとってラーメンを指す言葉でした。
25年ほど前、この店は「なんでんかんでん」と並ぶ博多ラーメンの雄として名を馳せ、私たちはタクシーに相乗りして、恵比寿と白金の間の首都高の下にあるこの不便な場所までわざわざやってきていました。
同じ豚骨とはいえ「なんでんかんでん」が骨髄入りの赤茶けたスープだったのに対し、この店はほぼ真っ白でクリーミーなスープ。福岡の店で例えれば「なんでんかんでん」が「一蘭」でこの店は「一風堂」でしょうか。
一時はブームに乗って店舗を増やし、渋谷の明治通り沿いにも店を出していました。
ところが、東京での豚骨ブームが去ると渋谷の店も消えてしまい、私たちの記憶からもこの店の存在自体が消えてしまったのです。
なので今回、天現寺にこの店を見つけたとき「まだあったのか!」というのが率直な感想。
さすがに豚骨だけでは生き残れなかったとみえ、「支那そば」「塩」が加わっていました。
久々の入店で頼んだのは標準「まるきんラーメン」にきくらげをトッピング。
そして2回目の訪問では「黒まる」を。
おいしかったのは「黒まる」でした。
もちろんベースは同じクリーミーな豚骨なのですが、黒い油がコクを与え、揚げニンニクのスライスがうま味を補強して複雑な味へ。
極細のストレート麺との相性もよく、真面目に作り続けてきたことがわかります。
チャーシューはジューシーでやや厚めなものの1枚しかないというのはちょっともの足りないですが、全体としては合格点です。
また、サイドメニューは全時間帯の餃子とごはんもののほかに、夜のおつまみが非常に充実。
博多風の小さな焼餃子もおいしかったですが、水餃子のぷりぷりした皮と柔らかな味の具のおいしさのほうが印象に残りました。
豚骨ブームが去ったあと、ラーメンの種類を増やし、おつまみを充実させるなど、必死に生き残りを図ってきたのがわかるメニュー。
いまは地域に根付いて、再び訪れようとしている豚骨ブームを待っているかのようです。
かつての豚骨ブームを知る人はぜひ。
知らない人も新たな味の世界を知るべく訪れてみてください。
「まるきんラーメン」(白金台/広尾・ラーメン)
https://tabelog.com/tokyo/A1316/A131601/13001628/