時の止まった猫屋敷、とでも申しましょうか。
アンティークや絵画が壁を埋め尽くし、黄色い照明が作り出す光と影の空間に鎮座する猫。
客席を気の向くままに歩き回り、気に入った椅子に飛び乗ってはくつろいでいます。
この店があるのは、新宿三丁目から東に5分ほど歩いたところにある三番街。
ここは、惜しまれつつ閉店してしまった洋食屋「いづみ」をはじめ、ユニークな飲食店が集まっています。
そのなかで異彩を放ってきたのがここ「アルル」でした。
店頭のオブジェからして奇怪。
逆立ちした少年の人形の上で、猫がナポリタンをフォークで食べている像。足の裏には「ニャポリタン」の文字が書かれていて、薄気味悪さを増幅しています。この少年の目はいまでこそ隠されていますが、隠される前の目つきはより一層気味の悪いものでした。
この像の気持ち悪さゆえに、私はこの店に入るのをずっと躊躇していました。
ところが今年に入って勇気を振り絞って店に入ると、薄気味悪さはありません。
アンティークな品々こそ最初は異様な雰囲気に感じられるものの、徐々になにか懐かしさを感じるように。
店内を闊歩する猫に触れたりするともう、猫と一緒になったかのように居心地の良さを感じ始めます。
そしてコーヒーを頼むと、頼んでもないバナナとジャイアントコーンがついてきて、まるで名古屋のよう。
そして食事の数々もまた、古き良き喫茶店のまま。
オムライスとハンバーグ、略して「オムラバーグ」は、ドリンクとバナナとジャイアントコーンがついて970円。
ややべたっとしたチキンライスを包む玉子焼きはあくまでも薄くレトロ。
ハンバーグは大きくも小さくもなく個性もなく、でも不満なくおいしく。
ナポリタンとハンバーグの組み合わせはやっぱり「ナポリバーグ」で900円。
薄いハムとちっちゃなピーマンが散りばめられたナポリタンも濃い味で、まさに古き良き思い出の味。
ハンバーグは業務用か店内手作りかの判断が難しいですが、たぶん業務用でしょう。
しかしこの店にとっては、猫のいるこのレトロな空間こそが売り。
客が腰かけていようがおかまいなしに飛び乗り、背もたれの上に鎮座してくつろぐ猫にかなうものなどありません。
願わくば、ランチタイムだけでも全面禁煙、そのほかの時間帯は分煙をお願いしたいところですが、条例で禁止されるその日までこの店は全面喫煙可で頑張るつもりなのでしょう。
ただ、煙の臭いが嫌いでもなぜか来たくなる“魔力”がこの店にはあります。
その謎を、みなさんも解きに行ってみてはいかがでしょうか。
「カフェ アルル」(新宿三丁目・喫茶)
https://tabelog.com/tokyo/A1304/A130401/13087540/