煮こみも絶品だし、やきとんの焼き加減も絶妙です。
しかし、この店で必ず食べてほしい、いや食べなければならないのは「牛タンの味噌づけ」です。
しっとりとした歯触りで、弾力のある噛みごたえ。噛んでいくと味噌の香りとともに、牛タンのうま味と味噌のうま味が混然一体となって口いっぱいに広がります。
このひと皿が600円。
串焼きがすべて1本100円、そのほかの全メニューが300円というなかで、このひと皿だけが突出して倍も高いのですが、それだけの、いやそれ以上の価値があります。
他の店ならば1,000円取ってもおかしくないと思えるのほどのうまさ。できるならばこれだけを
ずっと食べ続けて店を後にしたいほどです。
この店があるのは京浜東北線の東十条。
東十条駅の南口を出て左、東に向かってスロープを下りていくと最初の角にどら焼きで有名な「草月」があり、もうひとつ先の交差点を左折して振り向くとこの「新潟屋」があります。
東十条は街としては昼呑みのメッカ・赤羽のひとつ南というだけで存在感はあまりないのですが、西に隣接する十条と合わせてなかなかいい店が点在しており、この店は「斎藤酒場」と並ぶ素晴らしい店と言えるでしょう。
もちろん、そう評価するからには他のメニューも秀逸。
なかでも煮込みは300円ながらぷりっぷり。
よくある水に濡れた段ボールのようなもつではなく、しっかりとした弾力のあるもの。量もしっかりとあり、またスープだけでも酒が飲めるほどうまい。
これで文句を言える人はまずいないでしょう。
月島の「岸田屋」のようにビニール袋に入れてもらい、持って帰りたいほどです。
全品100円の串焼きもみんな柔らか。
とくに素敵だったのは「カモ」ですが、どうも鴨肉ではないのかも。
(シャレではありません)
まるで鶏のボンジリのようなぷりっとした食感にジューシーな味わい。
味つけをおまかせにすると味噌だれを表面につけて焼いてくれるのですが、この甘い味噌との相性がまた抜群で、思わずまた頼んでしまったほどです。
レバーもまた表面だけをかりっとなる寸前くらいまで火を通してあり、肉片同士がくっついていたところなどはぎりぎり熱が通ってるかどうかという絶妙の焼き加減。おすすめのタレでぜひ。
店内はカウンターとテーブル席合わせて30人ほど。
印象に残ったのは店内、特に調理場の清潔さです。
もつ煮の鍋や串を焼く炉が据えてあるステンレスの調理台は鏡のようにぴっかぴか。
カウンター側にあるごちゃごちゃした部分も含めてステンレスは一片の曇りもなく磨き上げられています。
安くておいしければ多少汚い店でもいい、と我々は考えがちですが、やはりきれいな店で食べられば安心感も違います。感じる味にも影響を及ぼすこともあるでしょう。
残念なのは予約不可だということで、まとまった人数で行くには向きませんが、ひとりまたは2人でゆったりとおいしいものを食べたいときには最高の店だと言えるでしょう。
並ぶ覚悟をしてでも行くべし、です。
「新潟屋」(東十条・居酒屋/やきとん)
https://tabelog.com/tokyo/A1323/A132304/13012327/