和歌山ラーメンは昔、和歌山市内の店で食べたことがあるのですが、そのときはふーん、という感じでした。鯖の押し寿司をラーメンと一緒に食べるのがユニークだったことは覚えています。
しかし和歌山の端っこ、もう少しで三重県という場所で食べたラーメンは予想以上においしく、和歌山ラーメンに対する認識をあらためることになりました。
熊野三山のひとつ、熊野那智大社がある那智勝浦町。街のはずれのロードサイドにある小さな店。
「たんぽぽ」といえば伊丹十三の映画。
シングルマザーが営む小さなラーメン屋に立ち寄った男が作り方を指導して去っていくというストーリーで話題になりましたが、その名をつけたこの店は名前負けしない味でした。
スープは濁った茶色。とんこつ醤油でこってりしながら醤油の風味も効いたはっきりした味。同じとんこつ醤油の広島ラーメンがぼんやりした味なのとは対象的。このスープだけで合格点を与えたくなります。
麺はストレートの中細。よくゆでられていながらエッジが立った感じで、小麦の味がちゃんとします。
チャーシューメンのチャーシューは4枚。
豚バラ肉をそのまま煮込んだもので、肉厚でジューシー。これはかなりうまい。そして青ネギが乗っているのを見ると、ああ西日本に来たんだなと感慨にふけってしまいます。
スープ、麺、チャーシューひとつひとつが高いレベルにあり、しかもしっかり同じ方向を向いてるためにおいしさ倍増といった感じ。
老夫婦に娘さんらしき3人の醸し出す雰囲気も明るく温かく、小さな店が笑顔に包まれる感じ。チェーン店では見られない人情もまたこの店の味わいと言えるでしょう。
東京からは最短でも電車で6時間、下手すると途中で一泊しないとたどり着けない人口1万7千ほどの寂れかけた町ですが、チェーン店すらおいそれと進出できない分、昔ながらのおいしいものが残っているようです。
ついでに頼んだ焼餃子も小粒ながら柔らかい餡がいっぱい詰まった手作り。
ビール片手に餃子をつまみ、ラーメンで締めて帰れる那智勝浦の人々を羨ましく思います。
かつて隣の新宮市で、素晴らしい和食を出してくれた「一玄」がなくなっていたのは悲しいですが、熊野詣での際には代わりにこのラーメンをぜひ食べてみてください。
「たんぽぽ」(和歌山那智勝浦・ラーメン)
https://tabelog.com/wakayama/A3005/A300502/30000817/