「かけかつ丼」が有名な店ですが、正直言ってこれは1,300円の価格に見合いません。
普通、玉ねぎをだしで煮てからとんかつを投入してさらに煮て、上からとき卵をかけてとじる、というのが一般的なかつ丼。
ところがこの店のかつ丼は、ご飯の上に乗せた揚げたてのとんかつに、トロトロの卵とじを上からかぶせる、というもの。だから、かけかつ丼。(ほかに煮かつ丼・ソースかつ丼あり)
カツがサクサクでおいしい、と各種メディアで取り上げられ、客の8割がこれを注文するメニューなのですが、正直、カツが薄い。
煮るタイプにしてもサクサクの歯触りは煮る時間を短くすれば実現できるわけで、実際にこのくらいのサクサクのかつ丼は池袋の「清水屋」にあり、しかも肉厚で安い。(かつ重ですが)
食べログでもこの「かけかつ丼」だけを食べた人々が高い点数を与えていますが、裸の王様の家来・国民もいいところです。
この店で食べるべきはアジフライ。そしてカキフライです。
アジフライは大きい1匹分が1枚。揚げた直後に斜めにカットされて出て来ます。
その断面を見ると薄い。あれ?なあんだ、とガッカリしながらかぶりつくと、分厚い!ふわふわです。
断面が薄かったのはカットする際に押し切りをやってたから。元の身はとても分厚く、身が柔らかい。青魚特有の生臭さが口に広がることもなく、ほわぁっとうま味で満たされます。
これはうまい、うますぎる。
房総半島の港町で食べたアジフライに匹敵するおいしさです。
そしてカキフライ。
単品で頼むと1個600円とけっこう法外に感じるカキフライですが、今回頼んだ冬期限定の定食では上記のアジフライとカキフライ2個で1,600円。
出てきたものはやや縦長で子どもの握り拳くらいの大きさ。
かぶりついてみると、柔らかくてサクサクの衣との間に隙間はなく、大きな牡蠣が空間を満たしているにも関わらずこれもまたふわふわ。
ほぼ生ではないかと思わせるほど柔らかく、それでいて芯まで温かくて閉じこめられたうま味が口いっぱいに広がります。これもうまい。
とにかく衣もやや粗めながらガサガサせずに柔らかく、揚げ具合も絶妙。
最近交代したという息子さんに、確かに技が継承されているのでしょう。揚げ以外の作業はお母さん、ホール担当がお父さん(ご主人)と美しい分業です。
ところで、コロナ禍のなかで店内は会話禁止。
狭い店内で感染対策として仕方ないのですが、私の横の常連らしきふたりの男がべらべら喋っています。ヤンキー上がりの成金っぽいふたり。堪らず私が壁の張り紙を指差し注意しました。
彼らが帰った後、ご主人が片付けながら「ごめんなさいね。毎回言ってるんですが聞かないんですよ」と。
男らは自分たちが常連だから許されると思っているようですが、心のなかで店に嫌われ、軽蔑されているのに気づけないのは哀れです。
さて、話が飛んでしまいましたが、アジフライ、カキフライは絶品。
メディアに踊らされず、ほんとうにおいしいものを食べてみてください。
私も、肝心のとんかつの定食を次に食べてみようと思います。
「鈴新」(四谷三丁目・とんかつ)
https://tabelog.com/tokyo/A1309/A130903/13027073/