むかし、恵比寿に「香月」というラーメン屋があったのを覚えてます?
その「香月」で修行をした人が営むラーメン屋が、東新宿にありました。
その名は「misato」。
巨大な都営団地の1階の、小さな店。
以前通りかかったとき、行列があったのでどんな店なんだろうと気になっていましたが「香月」の流れだったとは。
食べたのは「塩チャーシュー」。
スープをひとくち飲んだ瞬間、頭の片隅にあった記憶が呼び覚まされました。
豚骨などがベースという澄んだスープに背脂がびっしりと浮いているのに、食べてみると不思議にあっさり。
最初のひとくちは「ぬるい」と思いますがそれは表面を覆う油膜の温度。
その下のスープは適度な熱さです。
そう、この味。これが「香月」です。
表面をほぼ覆い尽くすチャーシューはとろんと柔らかいバラ肉を丸めたもの。味もしっかり染みていて、単体で充分おいしいのですが、覆い尽くすだけでなく、なんと二層。
かなりの量で、これ以上食べると気持ち悪くなりそうなほどのサービスです。
麺は博多ラーメン並みに細く、ゆで加減は「普通」で柔らかめ。私としてはこのくらいが小麦の味がちゃんとしてていい。
テーブルにはおろしニンニクや唐辛子もありますが、そうしたものの助けを借りなくても充分最後までおいしく食べられました。
しかしあの伝説の「香月」の味がこんなところで味わえるとは…。
「香月」はラーメンブームの全盛期、恵比寿の西口にありました。
ネオンで「香月」の文字を浮かび上がらせた小さな店のラーメンは「背脂チャッチャ系」の元祖と呼ばれ、当時絶頂にあったとんこつとは別のこってり系ラーメンとして人気がありました。私も何度か食べに行き、そのおいしさに魅入られていました。
ところがいつからか「香月」はその名前を聞かなくなります。
恵比寿に行ってみても、ない。
今回初めて知ったのですが、
恵比寿の店は2011年にいったん閉め、代わりに三軒茶屋に出したものの失敗。恵比寿に再度開店するもののそれも失敗し全面閉店となったとか。
その過程で創業者は経営権を手放し、スタッフは散り散りになったそうです。
そのうちのひとりが2014年に開いた店がここ。以来、知る人ぞ知る店として多くのファンを集めてきたそう。
そして「香月」のほうは全面閉店から数年後に、別の会社が資金を出し、創業者が味を指導して復活したものの、かつての勢いはもうないようです。
ここまで書いて「なんでんかんでん」と「御天」の関係とそっくりであることに気づきました。
一世を風靡したラーメン店が崩壊し、散り散りになったスタッフの一部がその味を受け継ぐ。
一方で創業者は、新たな企業の資金と引き換えに店名とレシピをライセンスして復活を図る…。そっくりです。
いまの「香月」の味がどうかは知りませんが、この「misato」があれば充分ですし、とんこつなら「御天」一本で本当にいいと思います。
さて「塩チャーシュー」と一緒に「半餃子」も頼んでみたのですが、これがカッチリしておいしかった。
ビールと餃子で楽しんで締めにラーメンという形でもいけます。
昼から道端で飲んでるようなオヤジがいたりするような場所ではありますが、このラーメンの味は往年の名作。
一度食べておくべき一杯だと思います。
「misato(ミサト)」(東新宿・ラーメン)
https://tabelog.com/tokyo/A1304/A130401/13171026/