【閉店しています】
「のど自慢」の生放送が終わった、まさにその瞬間。
テレビのスイッチが切られ、ラジカセから流れてきたのはまさに70年代歌謡曲のオンパレードでした。
鼻にかかった声で”あなたの好きな草原~♪”と歌うアグネス・チャンの「草原の輝き」から始まり、フィンガー5の「個人授業」、ガロの「君の誕生日」、内山田洋とクールファイブ「そして神戸」と果てしなく続くそれは、まさに「昭和歌謡ショー」そのものです。
しかし店名は奇抜であっても、提供するラーメンはいたってまじめでおいしいところがすごいのです。
とくに「地球の塩ラーメン」のおいしさは衝撃的ですらあり、これに匹敵する塩は原宿のAFURIの「ゆず塩」くらいしか思い浮かばないほど。
魚介と二種類の鶏を合わせたという透明のスープはわずかに強い塩味。しっかりとしたうま味とコクが中に満ち満ちていて、たちまち虜にさせられてしまいます。
席に「昭和歌謡ショーは化学の子ではありません」と大書きしてあるように、化学調味料不使用だというのにこれだけはっきりとした味に仕上げられるのは、素材の良さと手間暇、そして塩の良さならではです。
麺は、博多ラーメンと同じ極細のストレート麺。やや強めの塩味は、この麺に合わせたまさに”塩梅”なのでしょう。主人が麺とスープの相性を知り尽くしていることがよくわかる組み合わせです。
トッピングは薄いチャーシュー3枚にフライドオニオン、海苔、水菜にねぎ、そして玉ねぎ。そして煮玉子がプラス100円で選べるようになっています。なかでも素晴らしいと感じたのがみじん切りの玉ねぎ。生なのか、少し水にさらしたものなのかはわかりませんでしたが、ほのかな甘みとしゃりっとした歯触りがいいアクセントとなって舌を楽しませてくれます。
さらにユニークだったのは「〆のご飯」(200円)。
これは「塩」を注文した人だけが頼めるというもので、いったいどんなものかと思っていると、出てきたのは小さく刻まれたチャーシューとねぎ、海苔がトッピングされた小盛りのごはん。これに塩ラーメンのスープをかけて茶漬けのようにして食べろと言うのです。
これがまたおいしくて、スープを最後の一滴まで堪能してしまいました。塩ラーメンは替玉も選べるのですがここは絶対「〆のご飯」を頼んでみてください。
なお、この店にはほかに「王道の醤油ラーメン」と「七福白醤油ラーメン」があるのですが驚いたことに麺もチャーシューもトッピングもまったく別のもの。
「白醤油」のチャーシューメンを食べてみたのですが、麺は「塩」よりも少し太めで鹹水(かんすい)も多め、麺が少し黄色味を帯びています。
スープは醤油の風味が少し弱く、ちょっと漠然とした感じ。他の店ならここは化学調味料でエッジを効かせるところなのでしょうが、あえてそうしないところがこの店ならではということでしょう。
たぶん「王道の醤油ラーメン」がもう少しかちっとした味なのでしょうから、三番目に登場した「白醤油」はこういうポジションを取ったのだと思います。
「醤油」と「白醤油」には大盛りがあってチャーシューメンも用意されているというのに、「塩」は替玉だけ。一方「〆のご飯」は「塩」とセットでしか注文できないなど、複雑なシステムに見えますが、これもすべてそれぞれのラーメンをベストの状態で食べてほしいとの主人の思い入れがあってこそのもの。
かの「一風堂」で11年修業したという主人は、麺や替玉というシステムこそ博多ラーメンから引き継いだものの、まったく別のラーメンに挑みひとつの頂点を極めました。
カウンターにわずか5席。しかも同時に2杯しか調理できないようになっている厨房も、すべては最良のラーメンを提供するためものだとわかります。
山手線大塚駅から都電荒川線に乗り換えて2つめの「庚申塚」から徒歩2分。行くにはとっても面倒な場所ですが、とにかく「地球の塩ラーメン」はぜひ一度食べておく逸品だと思います。
なにがなんでも行くべき、絶対のお勧めです。
「昭和歌謡ショー」(都電庚申塚・ラーメン)
https://tabelog.com/tokyo/A1322/A132201/13113349/