「俺の」のあとは、「大人の」ですか。
正直、ハンバーグに所有格をつけるだけでこれだけスペシャリティが醸し出せるとは、恐れ入ります。
次あたり、「親父のハンバーグ」でしょうか。
しかしここのところ、渋谷に登場する新店で目立つのはカレーやハンバーグといった日常食ばかり。これもデフレの影響でしょうか。それとも若者の普段の食生活の貧困さを反映しているのでしょうか。
そのなかでもここは8月13日にオープンしたばかりのぴっかぴかの店。 調べてみると去年田町に1号店をオープンしたばかりでここが直営の3店目。チェーンとして今後大きく成功できるかどうかの鍵を握る大事な店という位置づけでしょう。
場所は東急本店の角を左に折れてすぐ。ラブホ街に続く坂道の角のビルの2階です。
ここにはたしかステーキ屋があって、そのまま居抜きで入ったようです。
店内は小さめで、鉄板を取り巻くL字のカウンターに6人分、テーブル席は10席分。
最初に入ったのはオープン翌日の正午過ぎ。すでに店内はほぼ満席で煙がもうもうと立ち込め、熱気が充満。しかも煙の正体は湯気ではなく、油気ですからなかなかに強烈です。
さっそく店名にもなっている「大人のハンバーグ」を200gで注文し、プラス80円のサラダを注文します。
まず出てきたサラダにびっくり。10cm四方の皿にはトマトにレタスに大根にニンジンに豆が数種類。けっこう手間とコストがかかったサラダが80円とはちょっと驚きです。ハンバーグ本体にすでに利益は確保されていて、サラダなどはほぼ原価という値段設定でしょうが、これは戦略としてかなり上手です。
そして出てきた「大人のハンバーグ」。
大きさが150g、200g、250gと三段階で選べるなか、真ん中の200gを試してみたのですが、目玉焼きに隠されて全貌がよくわからない状態。目玉焼きを横にずらしてみると背の高い拳状の塊がチーズを
かぶって現れます。
さっそく割ってみると中はレアというよりもほとんど生。
溶岩でできたプレートで好みの焼き具合まで加熱して食べるスタイルです。
ハンバーグそのものにしっかり下味が付けてあり、そのまま食べてもいいほどの味。肉も臭みがなく粗すぎず細かすぎずの挽き方もいい塩梅です。
ソースは「大人のソース」と「和風」「照り焼き」の三種類から選べますが、残念なのはハンバーグに直にかけることができず、浸して食べるよう指示されること。たしかに熱を持ったプレートに直接かければ油とともに周囲に大量に飛び散るのは必至でしょうが、せっかくエプロンや紙ナプキンを配布して着用させるのですから、認めてもよさそうな気がします。浸して食べるという作業のおかげで、なにか一段階テンションが下がる気がするのです。
まあ、店としてはソースまで飛び散られては掃除がさらに大変になるというのはわかりますけれども。しかしそもそも、カウンターに座っているだけで手のひらで操作するスマホの画面に細かい油滴が次々と飛んできて、食べた後は全身に油がまとわりつき、顔にも油の層ができたような感じになるほどなのですから、客としてはなにをいまさら、です。
さて、別の日にあらためて訪問して食べたのは「アボカドトマトハンバーグ」(200g)。
これにスープとサラダのセットをプラス100円でつけました。
サラダだけを付けてプラス80円でしたから、たった20円プラスでスープもつくのですが、正直なところこのコーンスープならどうでもいいかもしれません。
組み合わせのユニークさから頼んだ「アボカドトマト」ですが、率直に言うとあまり必然性を感じない組み合わせ。アボカドもトマトもただ乗ってるだけで、別に相乗効果がないのです。これなら「ダブルチーズ」のほうがいいかもしれません。
ソースは「大人の」には「大人のソース」、「アボカドトマト」には店員の勧めで「和風」を合わせてみましたが、どちらももう少し特徴がほしい感じ。せっかく店が「大人の」なのですから、コクとか苦味やえぐ味がうま味を引き立てるアクセントになるようなソースをひとつ期待したいものです。
価格帯としては、昔のファミレスを思わせる1,500円前後というなかなか強気のラインで、どこまでそのファミレスとの違いを強調できるかが勝負になってくる気がします。
スタッフの教育が行き届いていて、勘定のときのPOSシステムの操作がスムーズでないこと以外は不快な思いをすることはまったくありませんでした。
肉をしっかりと食べたい時に、油の臭いもいとわず突進して満腹になりたいのならぜひ行くべきでしょう。
肉食なあなたになら、お勧めです。
「大人のハンバーグ」(渋谷・ハンバーグ)
https://tabelog.com/tokyo/A1303/A130301/13145444/