日替わり定食 288円。
ごはん味噌汁おかわり自由。生卵1個つき。
東京の都心でこの安さは衝撃的です。
なにしろ、ほっともっとののり弁より安く、コンビニでカップ麺とおにぎり買うよりも安いのに、きちんとした定食が座って食べられるのですから信じられません。
この日のおかずは、玉ねぎとこま切れ肉の炒め。
事前に聞いた話ではおかずはかなりのボリュームで、日によっては巨大なメンチカツがついたりするとのことでしたが、きょうは量的な驚きはありません。288円で座って定食が食べられるのはありがたいですが、まあ悪い言い方をすれば「値段なり」の内容と言うこともできます。
この店があるのは曙橋。新宿三丁目からひと駅、防衛省が目の前にある都心の街ですが、なんとなくうらぶれた感じのある街でもあります。
その裏通りにあるボロい木造二階建てとはいえ、都心の片隅で300円を切る価格で定食を提供し続けるのは並大抵のことではないでしょう。
店内は手作り感満載。以前はもっと四谷三丁目寄りの雑居ビルにあったそうですが、木造二階建てに移転してきました。
この店にはランチで2回行きましたが、2回目となると感動は薄れます。
この日、店についたのは12:30すぎ。先に並んでいるのは5人ほど。ところが店に入れるのは順番ではなく、回数券とやらを持っていたり名前で呼ばれる常連客だったりしてどんどん割り込みが発生していきます。
なんか並んでいる客が馬鹿を見る感じ。そして20分ほど待っていたら厨房から「もうあと3人分しかないよー」という声が聞こえ、ちょうど私で終わりということになりました。後ろに並んでいた客は突然断られることになり、不満の表情をあらわにしますが、それでもここで怒っても意味がないことを悟りすごすごと退散しました。
ところがたったひとり、大きなキャスターバッグを引きずった若い女の子が「ごはんと味噌汁だけでも…」とゴネます。そこで何が起きたか。
最後の客である私のおかずが半分にされ、この女の子に残り半分を提供したのです。
たしかに288円は安いけれども、ほかの客が288円で食べられる量を自分だけ同じ値段で半分にされる筋合いはありません。
20分も並んでいる客を「もうないです」のひとことで追い返したことといい、いい加減な客あしらいにカチンときました。
もしかしたらこの店は、288円の定食を「施し」とでも思っているのかもしれません。安く食わせてやっているんだから我慢しろ、と。だとしたら勘違いもはなはだしい。
さて、この店は夜もユニーク。
どんなにたくさん飲み食いしても3,240円以上は受け取らないというポリシーとか。
店に入ると、「食事ですか?お酒ですか?」と尋ねられ、飲みだと言うと2階に案内されます。
かなり急な階段には「気をつけろ」「人生踏み外しても階段踏み外すな」といった注意書きが。「パンツ見えるぞ」は余計ですが。
2階は民家の住居部分をぶち抜いたまま。七輪の上に天井からダクトがぶら下がっています。
壁にはいろいろお品書きが貼ってあるのですが、スタッフのお兄さんの説明によればメニューは完全におまかせ。
飲み物はビールも含めてセルフで、自分で好きなだけついで好きなだけ飲める方式。
料理は枝豆に始まって、大量の煮物。意外に上品な薄味でおいしい。
ラーメンサラダらしき冷たい麺。この店のメニューにはザンギなどもありますので、主人は北海道出身なんでしょう。九州出身の私にはラーメンサラダ自体なじみがないので、この味の評価は控えておきます。
煮たかぼちゃとゆでた白菜。かぼちゃはただゆでただけ。ここまででも量としては結構なもの。連れは飲みが中心であまり食べない人間なので「これでお腹いっぱいになりそう」と。
しかしここでジンギスカン登場。
お兄さんが鍋の上に盛り付けをしてくれます。
これはもともと漬け込んであるやつを仕入れているようで安定の味。なかなかいけます。
ところが、ここで終わりじゃないところがこの店のすごさ。
さらにハムカツ登場。大きいうえに厚さ1㎝以上とボリューム満点。ちゃんとあつあつが来たのはうれしい。
伝説の80円ナポリタン登場。たぶん2人前。これが意外においしかったりしました。
ここまで大量の食べ物が提供され、結局かなり残してしまうことになりました。
しかし酒は大量に飲んだので、少なくとも損をした感覚はありません。
ところが驚いたのは、前に来ていた男2人組の客が、ほぼすべて食べて帰っていたこと。あの量を全部食うのはただものではありません。
この店、壁にはいろんなメニューがあるのですが、結局は有名無実のよう。1階の食事コーナーでもほとんどの客がジンギスカンをやっていましたから、好きなものを頼もうにも頼めないのかもしれません。
ともあれ、288円の昼の定食と、3,240円以上一切受け取らないという夜のコースは、広い東京にあっても非常に珍しく魅力的。
ぜひ話のタネに一度訪れてみることをお勧めします。好き嫌いは激しくあるでしょうが。
「定食酒場食堂」(曙橋・大衆食堂)
https://s.tabelog.com/tokyo/A1309/A130903/13212658/