名物・天玉そばです。
揚げたて熱々のかき揚げに温泉卵、それに辛いつゆ。この組み合わせがえもいわれぬ絶妙の味わいで、多くの人々を虜にしてきました。
ここは、新宿西口にある思いで横丁(しょんべん横丁)の片隅にあるそば屋。
こんな感じの小さなそば屋をふつう、なんと呼ぶか。
たぶん10人中9人までが「立ち食いそば」と呼ぶことでしょう。
実際には、客が皆、椅子に座って食べてるにも関わらず、です。
人間というのものは、物事をちゃんと見ているようで、実は先入観やイメージにとらわれて何も見ていないことを示す好例、と言ったら言いすぎでしょうか。
「立ち食いそば」というジャンルは不思議なもの。生麺や冷凍麺、さらには自家製麺を謳う店まであるというのに、そんな努力は見向きもされず皆「立ち食い」でひとくくりにされてしまうのですからかわいそうですらあります。
たしかに、手打ちや二八、十割といったこだわりを見せるいわゆる本格的な店に比べれば、こうした店は小麦粉の割合がそば粉よりも多かったりして「色の黒いうどん」と呼んだほうがいいようなものが多いのですが、つゆにかけてはかなり頑張っている店もあり、けっして侮れる存在ではありません。
この店のつゆもそう。
関東だけあってかなりの辛めではありますが、鰹節の風味が強く出ていてなかなか本格的。時間をかけずにぱっとすすって立ち去る、いわゆる「立ち食い」スタイルからして、こうしたインパクトのある味は合っている気がします。
一方で、麺は値段を考えれば上々ですが、やはり純粋に蕎麦として考えれば不満が残ります。
この店の名物は温かい「天玉そば」ですが、この夏の猛暑でつい冷たい蕎麦で頼んでみたところ、さすがに蕎麦の素性がさらけだされてしまい、ちょっとがっかりしてしまいました。
やはり「天玉そば」をはじめ、この店の蕎麦はうまいつゆとともに食べなければと実感しました。
話は前後しますがこの「天玉そば」、かき揚げは珍しくにんじんが多め。玉ねぎ、春菊が入り、店で揚げるためあつあつのサクサク。ただちょっと冷めるとぼってりした感じ出てしまいますので、急いで食べてしまいましょう。
朝の出勤時間。ひとけのなくなったしょんべん横丁で唯一、多くの人々が集い、せわしなくそばをすすって立ち去っていく場所。
新宿に朝、降り立った時にはぜひ立ち寄って一日の活力を充填していってほしい店です。
「かめや」(新宿西口・そば)
https://tabelog.com/tokyo/A1304/A130401/13006720/