さびれかけた駅前の、どこにでもありそうな居酒屋。
この店を表現する言葉としては、これ以上もこれ以下もないような気がします。
しかし、この店が非凡なのはホルモン。
新鮮ゆえのこりこりした歯ごたえと、じんわりとしみだすうま味。酒の伴としてじっくりつきあってくれるような一品です。ただ、噛んでいくと最後にほのかにウスターソースの香りがするところがいかにも九州らしい味付け、という感じはしますが、なかなかよそでは食べられない独自のおいしさを持っています。
福岡市近郊にある二日市という街の、西鉄(私鉄)の駅前にずっと昔からある店。
駅も、周囲の商店もなにも変わらずに、ただ時の流れにまかせて静かにさびれていっているような、そんな雰囲気の街にあります。
ちゃんぽんなどの麺類が700円前後なのに対し、このホルモンは800円。しかし内臓をそのまま仕入れて店で処理するという手間とこの味を考えれば、妥当な値段といえるでしょう。
そのほかにも一品一品の料理は手堅く、「皿うどん」はパリパリに揚げた極細麺に肉と野菜と練り製品を炒めた餡をかけた王道のもの。シメというよりも、しっかり食べられる一品です。
ただ、この皿うどんを食べたあと思いっきり後悔しました。皿うどんそのものの問題ではありません。メニューに目を疑うようなラブリーな一品を見つけたからです。
その名も「麺なしチャンポン」。
店のひとに聞いてみると「いや、普通のちゃんぽんの麺がないだけですよ」との答え。炒めた野菜と肉がとんこつスープの池で山になっているということなのでしょう。しかしそれでいて値段は普通のちゃんぽんと同じ700円というのですからいったいどう違うのか。
変わり種ちゃんぽんといえば沖縄で食べた、ごはんの上に野菜炒めを乗っけたものが史上一位ですが、ちゃんぽんなのに麺がないというこの一品も、それに引けをとらぬ一品です。
すでに皿うどんを頼み、かなり満腹の状態だったため注文はしませんでしたが、いまとなっては写真を撮り、実際に食べておかなかったことを非常に後悔しています。
おいしい店というと、どうしても大都市の繁華街にある店のほうが客も多く、クチコミの点でも有利になるため注目も集めやすくなってしまいます。
しかしたまにこうして小さな街の小さな店できらっと光る店に出会うことは、自分だけの宝物を見つけたようでうれしいもの。
学問の神様・太宰府天満宮への経由地であったり、さびれた温泉のある街ではありますが、なかなか立ち寄ることのない街でしょうが、もしなにかの機会で行くことがあったらぜひ暖簾をくぐってみてください。
そしてぜひ「麺なしチャンポン」を食べ、その感想と写真を私に送ってくれたらうれしいと思います。
「ひさや」(福岡筑紫野・居酒屋)
https://tabelog.com/fukuoka/A4003/A400301/40001543/