「バカでアホでフラメンキン」。
これ、料理の名前です。
かつて「ションベン横丁」と呼ばれた、新宿西口の酒場「思い出横丁」。
昼なお薄暗く、夜なお怪しいワンダーランドの中心で、バカだのアホだのと掲げて客をのけぞらせる店。それがこのつるかめ食堂です。
店内のメニューも意味不明の言葉が百花繚乱。「バカでアホでフラメンキン」「バカコンポジャ」「ソイのあたま」と、その一膳飯屋風の外観からは想像もつかない言葉の連射に、頭は真っ白になってしまいます。
さては言葉でごまかしてヘンな料理を出そうというのでは…、と対抗心を燃やしてそのヘンなメニューの筆頭「バカでアホでフラメンキン」を注文。
出てきたのは、意外にもまっとうにおいしい、でも見た目はやっぱり一膳飯屋の料理。ハムと牛肉を巻き衣をつけて揚げた天ぷらはシンプルにおいしく、塩コショウが効いていて何もつけなくてもビールのつまみにできるほど。
バカは雌牛、アホはニンニクを意味するスペイン語。
この店はこんな裏ぶれた場所にありながら、スペイン風の料理を出していたのです。
だからメニューに「トルティージャ」。
出てきたものは一見ぐちゃぐちゃでもはや原材料が何かすらも判別できないくらいなんですが、これがまたおいしい。トマトのちょっと青臭い風味が卵とうまく融けあっていて、スプーンですくって食べれば口一杯においしさが広がります。
これ一品にごはんと味噌汁をつけて(+300円)定食にしても一食分に十分なほど。
そのほか、「ソイのあたま」は大豆と挽き肉のカレー煮込み。もともと「ソイ丼」というカレー丼の具だけを別メニューにしたものだから「トッピング=頭」ということで「ソイのあたま」という名前になったものですが、これも酒のつまみとしてなかなかいけます。
もちろん、メニューはこんな意味不明の名前のものばかりではありません。
普通のアジフライからサバ焼き、天丼など一般的な食堂のメニューはほぼ網羅。壁一面のメニューに迷いそうです。
「アジフライ定食」を試してみたのですが、“アツアツならば揚げ物はなんでもおいしい”というセオリー通りのアツアツぶり。ちゃんと自家製であり、手抜きはありません。
もうひとつ、以前はなかった「なまずの天ぷら」も試してみました。
さくっさくでふわふわ。いまや川魚が泥臭い、というのは過去の話になりつつあるとはいえ、素直な味でおいしい。6個もあり、これで500円ならお得です。
場所が場所であり、バカだのアホだのとコピーも刺激的なだけに、初めて入るにはかなりの勇気がいる店ではありますが、一度入ってみるとリーズナブルでおいしい料理に元気づけられます。
ぜひ一度、このワンダーランドを旅してみてください。
「つるかめ食堂」(新宿西口・大衆食堂)
https://s.tabelog.com/tokyo/A1304/A130401/13000767/