これが一世を風靡した「もと村」 の牛カツかぁ。
渋谷の川沿いに本店があるのは知っています。
しかしいつもいつも大行列だったので、食べる機会がありませんでした。
新宿・歌舞伎町近くの細い路地にあるビルの地下に、ひっそりとその店はありました。
階段を下りて行っても、行列はありません。
午後2時前という遅い時間ではありましたが、渋谷の大行列を見慣れた身にとっては意外な光景です。
カウンターの前には、小さな鉄板が。まるで温泉旅館の夕食のようにひとりひとり自分の肉をあぶれというのです。ここ、カツの店でしょ?カツなら衣につけて揚げて加熱する料理。なぜ揚げた上に鉄板で加熱するの?だったら最初からしっかり火を通したら?
そう疑問が膨らんでいるうちに膳が運ばれてきます。
頼んだのは「牛カツ麦飯とろろセット+明太子」1500円。ホームページには載っていないので、新宿店だけのメニューかもしれません。
ひと切れ、めくってみると…。
まっかっか。
しかし牛肉ですから、衛生状態がいい限り生で食べられるはずです。
それをいちいち「鉄板であぶって食え」というのならなんのために衣をつけて加熱しているのかわかりません。肉の質と衛生状態に自信がないのか?と穿ってしまいます。
実際にひと口、そのまま食べてみましたがとくに問題はありません。
しかしやっぱり周囲の雰囲気に乗せられてあぶってみることに。
断面をそれぞれ5~6秒、赤みが消えるくらいでじゅうぶんでしょう。食べてみるとまあおいしい。
ただ、あまりにもひとつひとつが小さいため、肉を味わう、といった感じにはなりません。なんかご飯をかき込むための「おかず」としての役割のよう。いまひとつ「肉を食ってるぞ~」という高揚感にとぼしいのです。
つけるたれは二種類。ごまをベースにしたたれと醤油。それとミル入りの塩が用意されています。
ご飯は麦がちょっと入っただけのほぼ白米。そんなに質の良い米ではありません。
春節(旧正月)とあって、新宿は中国人観光客だらけの様相を呈していますが、この店も中国人だらけ。私の席の両側も中国人の若いカップルで、ガイドブックに日本のグルメとして紹介されているこの店に来ているのでしょう。しかし、このカツを彼らはどう思うのか…。
ふと隣の中国人をを見ると、大量の肉を乗せて焦げ目がつくまであぶってます。
それじゃ単なる焼肉と一緒じゃん…。
たしかに彼らの住む国の衛生状態では肉を生で食うなどということはありえないでしょうから、生理的にしっかり焼きたくなるのはわかります。でも、だとしたらなんで肉が赤いまま出てくる店なんかに来るのさ?新大久保の焼肉屋に行きなさいよ、と言いたくなってしまいます。
日本人を見ててもけっこうあぶってる時間は長め。生でも食べられるという牛肉のメリットはもはやどこにもなく、だったらもっとおいしいとんかつがいくらでもあるのに、と教えてあげたくなりました。
しかしあっという間に全国19店舗を擁するまでになった「もと村」。
昔、大阪ではとんかつよりも一般的な存在だったという牛カツを現代に復活させたその味を一度は味わってみるのもいいでしょう。
「もと村」(新宿・牛カツ)
https://tabelog.com/tokyo/A1304/A130401/13195827/