クエ(アラ)がこれでもかと出てくるのはさすが福岡だと思いました。
ただ、寿司より感動したのが鍋でした。
福岡・中洲にある寿司店。「孤独のグルメ 真夏の博多出張編」で井之頭五郎が「一富」に入る前に「入った辺りにちょいとそそる寿司屋があったな…」と呟く場面がありましたが、たぶんここのことでしょう。(周囲に寿司屋はほかにない)
店内はカウンターが6人で4人席ひとつ。板場には一見厳しい雰囲気のご主人と若い女性の板前さん。
寿司屋に来たからには寿司を、と思いましたが、にぎりが8貫で「中」3,000円、「上」4,000円とちょっと中途半端。一方で「大将おまかせ」は10,000円。おまかせは店の格からして東京と比べて3分の2くらいの激安でしょうが、福岡のほかの料理の値段を知ってしまうとちょっと腰が引けてしまいます。
メニューをめくってみると「コース」があって、6,000円、8,000円、12,000円の3つ。中身も8,000円だと先付け・刺身・一品料理・葱鮪鍋(又は葱鮪汁)・寿司となかなか豪華そう。これにしました。
最初の先付は牡蠣の天ぷら。刺身はまずアラ。もっちりしてうまい。続いてマグロ、青柳、タコ、イカとウニ。けっこう全体の量が多い。次は「あん肝の天ぷら」。あん肝って加熱するとホロホロの食感になるとは知りませんでした。添えられたえんどう豆もおいしい。
イイダコの煮付け。イイダコが高価になり、なかなか口にできなくなりましたが、このイイダコは頭のなかにある米粒状のものがぷちぷちして本当のコメのよう。
さらに鯛の煮付け。あれ?一品料理のはずが3品めでは…。この鯛がしっとりふわふわで、出汁がまたおいしいこと。感動ものです。
いよいよ名物という葱鮪鍋(ねぎまなべ)。
その名の通り、白ネギとマグロを煮たものですが、ベースとなる出汁にマグロのうま味とネギの甘みが溶け込み、えも言われぬうまさになっています。さらにこの出汁を使ったうどんも。細くてしなやかでコシのある稲庭うどんが非常に合っていて、ついおかわりまで。おいおい、寿司がこれからだというのに。
この葱鮪うどん、あまりにも人気なので3軒隣にこのうどん専門の別の店を開いてしまったほど。たしかにこれだけでも食べてみてほしい一品です。けっこうお腹にたまった状態でやっと寿司。
マグロ赤身、イカ、ふぐ、蒸しエビ、サザエ、サワラ、最後にウニの軍艦巻き。7貫も出てきました。一品料理が3つといい、サービスしすぎでは…。
とくにおいしかったのはサザエ。ものすごく薄くスライスされたサザエの身はコリコリ感がちょうどよく、噛めばうま味がじわっと。ほかのも素材の良さが光っていました。
よく寿司を語るのに「仕事」という言葉を使って、ヅケだったり昆布締めだったりの下ごしらえをすることが「江戸前」であり、これをしてない物は寿司じゃない、みたいな蘊蓄を傾ける人がいます。
しかしそれは運送手段が未発達で冷蔵というものがなかった時代に「腐らせないため」にやっていたこと。新鮮なものが一番うまいに決まってます。
目の前の海で獲れる新鮮な魚をそのまま寿司として食せる幸せ。福岡の寿司は幸福そのものです。
「岩正」(福岡中洲・寿司)
https://tabelog.com/fukuoka/A4001/A400102/40005911/