鯨の「尾の身」を初めて食べました。
とろーんとしてて柔らかく、甘い。おろしたニンニクをちょっと乗せ、醤油をつけて食べれば至福のひととき。
鯨肉特有のえぐ味というか血の匂いもなく、さすが最高級の部位です。
私が「尾の身」を食べ損ねたのは学生時代。
バイト先の兄貴みたいな人とよく飲み歩くなかで、ある日酔ってたどり着いたのが寿司屋。
なにを注文するかあーでもないこーでもないと話す我々に、ご主人が「尾の身があるから食うか?」と冷蔵ケースの上にドンっと置いた大きな赤い塊。
「これで3万円。これが最後。これを逃すともう一生食べられないぞ。」
当時、日本がアメリカなど反捕鯨国からの圧力に屈する形で、南氷洋での商業捕鯨から撤退したときでした。もう鯨は食べられないと思っていました。
それから30年。
ようやく食べた尾の身は、再開された商業捕鯨のもの。生だと言うのでミンクのものでしょう。
この尾の身を食べたのは「一乃谷」。神田にある鯨料理専門店です。
行ったときは、竜田揚げ定食を食べようと思っていました。
しかしご主人から「1,500円出してくれればウニつけるよ」と殻付きのウニを見せてくれます。
そういえば以前、この店でオフ会を開いたときもサービスでひとり1個の殻付きウニを出してくれたっけ。
素晴らしい料理の数々に感激した記憶があります。
でもウニの気分ではなかったので遠慮すると「じゃあ尾の身つけて4点盛りで1,500円はどう?」との提案、乗ってしまいました。
緊急事態宣言で酒が出せなくなり、夜の営業がさっぱりになったいま、せっかく仕入れた物がダメになるくらいならと始めた期間限定サービスだそうです。
激レア・激うまの尾の身のほかは自家製の鯨ベーコンに赤身と内臓。
専門店だけあってどれもおいしく、味噌汁も具だくさんで嬉しい。
この店は鯨肉の卸売もやってるとのことで、尾の身などの希少部位をはじめいろんな鯨肉を安く持ち帰ることもできます。
私も捕鯨を長く取材し、いまは映画「ひみつくじら」の製作にチャレンジしている身。
「同志」として応援していきたいと思います。
みなさんも、ぜひ行ってみてください。
鯨に親しむことが、太古からの歴史をもつ鯨食という日本の文化を守ることになりますので。
「一乃谷」(神田・鯨料理)
https://tabelog.com/tokyo/A1310/A131002/13115518/