池袋西口でオヤジの店といったら豊田屋、
豊田屋といったらやはりこのニラ玉でしょう。
ちょっとふわっとして、ちょっとぶしゅっとして、ニラもあんまり入ってないんだけど、なぜかおいしい。
昔ほど暗くて怖くて混沌とした雰囲気はなくなったとはいえ、 ソープやSMクラブや中国食品店がひしめき合う池袋西口はやはりいまも禁断の巣窟。
かつて池袋という地名に影が付きまとっていたのは、この西口の雰囲気と表裏一体だったからでしょう。
その池袋西口で昔から安い居酒屋、やきとんの店として知られてきた豊田屋。1号店から3号店まであるようですが、店の雰囲気からメニューまでかなり違うようで、統一感はあまり感じられません。
そのなかで、評判がいいのがこの3号店。
上記の名物料理「ニラ玉」を筆頭に、メインの焼き物以外のメニューも充実。池袋に勤務先があったら毎週2度は通うだろうなと思わせるほど飽きさせない品ぞろえと、安さを誇ります。
焼き物でおいしいのは、なんといっても豚バラ。
豚バラを串に刺して焼くというのは本来、九州のスタイルで、九州の焼鳥屋では必ずあるメニュー。
焼鳥屋なのになぜ豚バラが…という疑問すら感じないほど当たり前のことで、逆に九州人がよその地域の焼鳥屋に入って「なんで豚バラがないとね?」と聞いてしまうほどのスタンダードメニューなのです。
そのほか、ハツやレバーなども新鮮なのでしょう、臭みもなく歯ごたえも良く、おいしいものばかり。
最近でこそ「やきとん」を堂々と名乗る店が多くなりましたが、豚のモツ焼きはもともと日陰の存在。かつて豚肉より鶏肉のほうが高かった昭和30年代、焼鳥の”代用食”として登場したのが最初であったために、漢字ではなくひらがなの「やきとり」を名乗り提供されてきました。そのやきとんの伝統を守るこの店は、庶民の味方であり続けたのです。
現在は鶏肉の焼鳥や、一品料理も充実する中でおもしろいのが「塩さば串焼き」。
市販品の塩サバを単に切って串に刺し焼いただけなのに、すごくおいしく感じてしまうのです。串焼きと同じ「遠火の強火」だからでしょうか。それとも雰囲気がそうさせるのでしょうか。
また、もうひとつの人気メニューがうずら卵の串焼き。
子どものころの遠足のお弁当を思い出すからでしょうか。なんか不思議に食べたくなる一品です。
時代の流れのなかで、ずっと変わらずあり続けることの凄みさえ感じさせるおやじの店。単なる見物気分では店にもほかの客にも失礼です。
この独特の空気を感じ、一体になって楽しむくらいの気持ちを持って、ぜひ行ってみてください。
「豊田屋3号店」(池袋・やきとん)
https://tabelog.com/tokyo/A1305/A130501/13056400/