まかないから定番に昇格したというメニュー、「味噌かつ親子丼」です。
ご飯の上に乗せたチキンカツに赤味噌のたれをかけ、さらにキャベツの千切りで覆って卵の黄身を落としたもの。親子丼と言うにはちょっと苦しいものがありますが、キャベツのボリュームに圧倒されそうです。
黄身はキャベツの上でつぶすのでしょうが、店のお勧めは「これにさらにマヨネーズとからしと、すりごまをかけると名古屋風になりますよ」とのこと。
以前から味噌汁などで感じていましたが、やっぱりこの店は名古屋が味のベースだったようです。
チキンカツはもともと小さいカツをさらに細かく刻んだもので、「なあんだ」と最初は思いますが、食べ進むうちにご飯の上の隅々に隙間なく敷かれているため、どこまでも終わりが見えません。
味の濃さもあり、ご飯は少なめなもののかなりな満腹感が味わえます。
この店があるのは、新宿花園神社の隣。明治通りに沿って北隣です。
看板で波打つ長い名前は「いんしょくしょうしょうなにやねこぜん」と読みますが、みんな「ねこ膳」と呼んでいます。
昼間に見ると、蔦が店の建物全体にからまって一層怪しい雰囲気を醸し出しています。「飲食笑商…」の黄色い看板の上に描かれた大きな招き猫が目印です。
ここは24時間営業の食堂兼居酒屋。安くておいしくて、昼も夜もオールマイティ。あるようでなかなかない貴重な店のひとつと言えるでしょう。
まずありがたいのは、夜も600円台からの廉価な定食を出してくれること。
焼魚やカツ・フライといった定番の定食が中心ですが、「サバと大根の味噌煮」といった和風総菜もあり、バラエティに富んでいます。また肉にしても魚にしても、産地を明確に表示しており、安心感があります。
「サバの大根の味噌煮定食」は630円。コロッケ1個つきで730円。
鯖の切り身を薄味に煮込んだものと大根に味噌だれをたっぷりかけたもので、味噌煮と言っても京都風。味噌だれはちょっと塩味きつめですが、味噌だれのつけ方で味が調節できます。
キャベツとトマトがちょこっとのサラダと漬物、ごはん、味噌汁がついて630円はかなり安く感じます。
ほかに、カツカレーを頼んでみてもカツは大きく、皿は深くてなかば丼のようで量はたっぷり。
なにを頼んでもコストパフォーマンスは高くて安心感があります。
一方、夜は飲み屋としても優秀。普通なら有無を言わさずついてくる「お通し」がありません。
一方で写真のセット。生ビールの中ジョッキに味付玉子とたくさんのメンマがついて600円と激安。
これに定食を付けてもよし、ほかに単品のつまみをつけて呑み進んでもよしで、ともに2,000円でちょうどほろ酔い気分になれます。私なんかはよく隣のゴールデン街に行くときの腹ごしらえというか景気づけに利用して重宝していました。
あと、単品で特筆すべきは餃子のおいしさ。やや低めの温度で焼かれた餃子はしっとりもちっとした皮と柔らかい味の餡がとても印象的。これだけで餃子店としてもやっていけそうな感じです。
とにかく昼も夜も、なにを食べても申し訳ないほどに安くておいしいこの店。
かつては、親父さんひとりでやっていることが多く、てんてこ舞いしていた印象が残っていますが、いつからか女性を中心に劇団員らしき人々の姿が目立つようになって、24時間営業になりました。この店が劇団の運営を支えているのかもしれません。
花園神社の北隣というロケーションの悪さはありますが、それでもふらっと寄ってみる価値は間違いなくあります。
機会があれば一度ぜひ。
「飲食笑商何屋ねこ膳」(新宿・食堂/居酒屋)
https://tabelog.com/tokyo/A1304/A130401/13043840/