石巻のひとは幸せです。
だって、信じられないほどうまい焼鳥が、普通に食べられるのですから。
東京でもめったに出会えない、というか出会ったことのない素晴らしい焼鳥です。
なかでもレバーは秀逸でした。
ぽわぽわ、と言うか、ぷよぷよ、というかその柔らかさと軽やかな弾力は言葉にしがたいほど。
苦味もなく、軽くねっとりとしたあとに広がるうまみは、1本たった180円のものではありません。
せせりも細かい包丁が入っていて、噛むと少し抵抗しながらホロホロと崩れていく感じ。真ん中の部分にだけ油淋鶏のような甘酸っぱいたれがかかっていて、軽い驚きが喜びに変わります。
つくねは細かく砕かれた軟骨がアクセントとしてよく効いていて、濃いたれが卵の黄身と絶妙の調和を奏でます。
これらみんな1本180円か200円。
5本おまかせなら850円ですから夢のようです。東京ならこの水準のものは2,000円では食べられない。いや、店構えがよければ3,000円はとれる内容です。
そのほか「牛すじの煮込み」(600円)はうま味がしっかりありながら、くどくなくあっさり。以前NHK「ためしてガッテン!」で、一般の人々に実験で赤だしを飲ませたらビーフシチューと間違えたというのがありましたが、まさにそんな感じの味でした。
最初のつきだしのきゅうりの漬物の新鮮さから、ただ者ではないと思っていましたが、想像をはるかに上回るうまさの焼鳥でした。
惜しむらくは、この店に入る前に刺身や寿司をさんざん食ってしまっていたこと。
奥の方の席で若い連中が「うめぇ」と騒いでいた親子丼や雑炊にたどり着けなかったことが心から残念です。
素晴らしい店を見つけました。
この店に入った自分の“嗅覚”にさらに自信を持つとともに、この店を世に知らしめ、正当な評価を得てもらいたいと願います。
石巻に行くことがあったらぜひ。いや、この焼鳥を食べるために石巻へどうぞ。
絶対のお勧めです。
「おのでら」(宮城石巻・焼鳥)
https://tabelog.com/miyagi/A0404/A040403/4018978/