とんこつラーメン発祥の地として知られる久留米は、実は餃子の街です。
久留米の餃子はちっちゃいひとくち餃子。私が唱える「餃子は西に行くほど小さくなる」法則に沿った小ささです。
なかでもこの店「五十番」は、久留米で生まれ育った人々の間でトップと称される店。
移転したと聞いていたので、あのお世辞にもきれいと言えない小さな店がどんなきれいな店に生まれ変わったのかと思ったら、前に行ったときそのままでした。
なあんだ、前に行ったときもうすでに移転してたのね…。
しかし細い路地の古い建物の小さな店はいいとして、移転したばかりなのにこのくたびれた雰囲気はなんなんでしょう。
店内は変形コの字型のカウンターのみ。
その中央の壁際にずらっと業務用ガスコンロが並び、鉄鍋が置かれています。
途中で木の蓋をして蒸し焼きに。この鉄鍋のまま客に提供されます。
餃子は長さ5㎝ほどの小さいものが7個で450円。扁平で中央部分が薄く盛り上がる様は、非常に例えが悪いですがゴキ〇リのよう。片面しか焼かれておらず、全体は蒸し焼きとなっていて、下はカチカチのパリパリ、上はふんわりというこの食感の違いが多くの人々を虜にする秘訣のようです。
餡も少ないけれども、しっとりしていてうま味がじゅうぶん。ひとつ食べたらまたひとつ食べて味を確かめたくなる。そんな連鎖でついつい2人前3人前と行ってしまう、マジックのような餃子です。
一方、以前食べた水餃子はあまりピンとくるものではありませんでした。やはり皮のパリパリ感がこの店の餃子の命のようです。
メニューはほぼ餃子のみ。
餃子以外の食べ物は「めし」「おにぎり」「キムチ」だけですから潔さが光ります。
しかもそれぞれ、めしは小100円、大150円、おにぎり2個300円、キムチ150円のお手頃価格。
キムチを頼んでみましたが、キムチというよりも昔「朝鮮漬」と呼んでたものに近い感じ。まだ本場のキムチが身近になる前に日本人に合わせて作られた「辛い白菜漬」を「朝鮮漬」と呼んでいた時代を思い起こさせる一品で、店の歴史を感じさせます。
実際食べてみると満足感は高いのですが、しかしちっちゃな7戸で450円はちょっと高い。
どうやら久留米の人々は、この店をメインとして使うのではなくハシゴ酒の2軒目3軒目に挿入しているようなのです。事実、開店まもない時間はガラガラですから、深夜に近くなるほどこの店はにぎわうのでしょう。
久留米の人々がこよなく愛する、ちっちゃな餃子のちっちゃな店。
博多の陰に隠れた美食の街・久留米をめぐる際に、この店をスタートにするのが非常にお勧めです。
「五十番」(福岡久留米・餃子)
https://tabelog.com/fukuoka/A4008/A400801/40007271/