昔ながらの、古き良き「グリル」がここにはあります。
ハンバーグステーキ&ガーリックステーキのセット(1,550円)。
熱々の鉄板からほとばしる蒸気と音。平らな皿に盛られたご飯にお椀の味噌汁、そして昔懐かしいソースポットが、頑なに守り続けてきたニッポンの洋食の伝統を感じさせてくれます。
ハンバーグは細かく挽かれたペースト状の肉を薄く固めたもの。ガーリックステーキはやや歯ごたえのある赤身の肉で、フライドガーリックがいいアクセントです。
おいしい。けれどももっと懐かしい。
ときどき無性に来たくなるのはなぜなんでしょうか。
早稲田通りの路地裏にひっそりと佇む、私が学生時代からあったと記憶する店「キッチン谷沢」。
昔気質のご主人と、テキパキと気の利く奥さん。そして3年ほど前から加わった、まだまだ一人前になれない息子さん。典型的な家族経営の店は、昔と変わらぬ味を提供し続けています。
正しいニッポンの洋食屋ですから、当然揚げ物もおいしい。
ミートコロッケ(右)&エビクリームコロッケ。
ミートコロッケというのは、ひき肉を固めて平らにしたものを揚げたもの。そう、ほかの店でいうメンチカツです。これがなかなかジューシーで私の好み。
一方でエビクリームコロッケは、ほかの店のエビクリームコロッケとは違います。
エビ1匹を開いたものが、そのままの姿でクリームに包まれ揚げられているのです。なかなかに個性的でユニークです。
さらに豪華なのが、ミートコロッケ&ヒレカツ&エビフライのミックスフライ。このエビフライは普通ですが、3つ並ぶとなかなかの迫力。相当のカロリーです。
もちろん、冬にはカキフライも。
この店のカキフライは、ほかのメニューに比べて安いため、たぶん小さくて少ないのだろうと思い、ミートコロッケをオプションでつけました。
ところがカキフライはけっこう大きめなものが5個も。これにミートコロッケはさすがに多すぎて、食べるのに苦労しました。
でも同じ揚げ物でも、ロースカツだけはなぜか薄い…。
まあセットで1,100円と、この店のディナーメニューとしては安いほうなので、しかたないと言えばそうなのかもしれませんが、ちょっと肩透かしをくらった気分になってしまい残念です。ニッポンの正しい洋食としては、とんかつにもうちょっと力を入れてほしい気もします。
カレーをはじめとするご飯ものも当然あり。
最近登場したデミソースカツ丼はご飯の量が圧倒的。たぶん2合はあります。上の写真はご飯を減らしてもらってこれですから、元の壮絶さは推して知るべし、です。
さあ、締めはやっぱりグリルに戻りましょう。
豪華版、ステーキミックスグリル(セットで1,800円)。
ステーキとハンバーグとエビがいっぺんに食べられるという、昭和の夢のメニューです(ステーキ薄いけど)。これもさすがにお腹いっぱいになります。
でもこれでもビール中ジョッキをつけて2,250円。居酒屋なんか行くより満足感高くてお腹いっぱいになりますから、むしろ安い。
早稲田通りと明治通りが交差するあたりの、細い路地でひっそりと商売を続けながら、何十年も変わらず地域の人々に愛され続けてきたこの店。
黒光りする鉄板でほとばしる湯気と音、湧き上がる匂いと歓声のなかで、いつまでもこの味を守り続けてほしいと願うばかりです。
「キッチン谷沢」(高田馬場・洋食)
https://tabelog.com/tokyo/A1305/A130503/13006180/