これまでいろんなインドカレーを食べてきましたが、そのどれとも違う不思議なカレーです。
創業は敗戦間もない1949年。
直前まで英語を「敵性語」と呼び、国際化などという言葉すらなかった東京で生まれたインドカレー。
インド人が作っていても、材料の制約や当時の日本人の嗜好などから独自の進化を遂げたのでしょうか。
「定番でいいですか?」
店に入るなり恰幅のいいご主人・ナイルさんに訊かれ、有無を言わさず注文させられるのは「ムルギーランチ」(1,500円)。
メニューすら見せてくれず、店内にも掲示ひとつなく、何があるのかすらわかりませんが、隣の男性客はノンアルコールビールのつまみに何か別のものを食べていましたからあることはあるようです。
ほどなくしてやってきた銀色のプレート。
黄色いライスと一面のカレー。
鶏の骨付きもも肉一本まるごとに山盛りのゆでキャベツ。
その下にはマッシュポテトが隠れています。
骨付き鶏もも肉は、提供と同時にスタッフによって骨が外され、あっという間に細かく切り刻まれます。
スプーンとフォークが用意されますが、フォークで刺すものがないほど。カレーはサラサラでもなくやや粘度あり。
最初甘く、じきに辛さがやってくる感じ。スパイスはそんなに刺激的ではなく、かといって日本的なわけではない。形容しがたいとしか言いようがない不思議な味。しかしおいしい。
鶏肉は7時間煮込まれただけあってほろほろ。
ライスは見た目よりも量が多く、モチモチした日本米です。
混ぜるとキャベツの甘さ、マッシュポテトの甘さが加わり一層複雑な味となっていきます。
銀座のはずれ、ビルの谷間に埋もれるようにたたずむ2階建ての小さな店。
70年以上の歳月が育んできた、独自のカレーを味わってみてください。
「ナイルレストラン」(東銀座・インド料理)
https://tabelog.com/tokyo/A1301/A130101/13002329/