10年前ならいざ知らず、現代の東京で食べログに載ってないどころかGoogle で検索しても出てこない店がまだあるとは思いもよりませんでした。
東京といっても、檜原村とか青ヶ島とかではありません。23区、といっても練馬区や足立区でもありません。都心5区の渋谷区に「知られざる街中華」があろうとは。
その、おだやかな老夫婦が営む店で出す料理は、庶民的なニッポンの中華。
ラーメンにハンバーグにご飯がついた「ラーメンセット」がちょっと異色ながらも800円とかなりお得です。
ラーメンはスープがあまりにも透明で、味がないんじゃないかと心配になるほど。
しかし鶏ガラベースの意外にうま味の濃い味でほっとします。
麺は細めのストレートでよくゆでられていて量も多い。
これにハンバーグとご飯を食べるとパンパンになってしまいます。
これで800円とは街中華恐るべし、です。
この店があるのは渋谷区本町。
都営大江戸線の西新宿五丁目駅から山手通りを越えて徒歩10分ほどの距離。周囲に店もない小さな路地にその店はあります。
ただでさえ地味な店の前には、その存在を隠したいかのような植木の束。まるで草木で偽装したスナイパーのようです。
メニューは街中華にしてはかなり少なめ。600円のラーメンを基本に味噌ラーメン、カレーメン、タンメンと麺が並び、ニラレバと生姜焼きの定食ふたつにカレーライスと炒飯のみ。これに上記のラーメンセットが加わっても9種類のみ。恐ろしくシンプルです。
2度目の訪問では生姜焼き定食を。
生姜焼きは、タレがほとんどないタイプ。焼き付けて飛んでしまったようで、その分、肉はカリッとした感じ。
やや厚めの大小様々な肉が山を成しています。味もしっかり肉にしみ込んでいて、なかなか食べ応えあり。
タレがほとんどないので、キャベツを食べるときにやや往生しましたが、丁寧に切られたキャベツはそれ自体の味を楽しむことができました。
全国のブラスバンドの憧れのホールだった普門館の前に店があったそうで、時には海外のオーケストラの団員も食べにくることがあったとか。
その後10年ほど前にこの場所に移転。
なので平日昼間だけの営業で、店自体が知られずとも構わず、儲けも不要。
ほぼ道楽でやってる店のようで、それが老夫婦の品の良さや穏やかさに繋がっているのでしょう。