「孤独のグルメ Season6」第11話の舞台となった店で、「回鍋肉」や「アボカドのセイロ蒸し」がとてもおいしそうでした。
しかし実際に行ってみて印象的だったのは、パクチー(香菜)が味の一部として織り込まれ、完全に一体化しているさま。
たとえばその日の黒板メニューだった「黄ハタのセイロ蒸し」。
黄ハタ(アオハタ)の身のうま味と醤油ベースのタレとパクチーの香りが一体となってうま味が倍加しています。
また、「孤独のグルメ」本編のあとの「ふらっとQUSUMI」で原作者の久住昌之さんが激賞していた「黄燈籠豆腐」(激辛豆腐煮)でも、辛さにパクチーの味と香りががっぷり四つとなり、ひとつの味のハーモニーを形作っていました。
黄色い唐辛子の鮮烈な辛さのなかに不思議な甘さがある一品。
ここではパクチーは単なる薬味ではなく、味を決定づける重要なキーとなっているのです。
この店があるのは小石川。
茗荷谷駅から歩いて10分ほど、小石川植物園の目の前にあるこじんまりした店です。
店内は2人がけテーブルの組み合わせで16席ほど。孤独のグルメ以降、予約が全然取れない店と言われていましたが、今回は4日前の電話で2人がOK。コロナ第三波の影響でしょうか。
ただ、実際に行ってみると11:30の開店直後から店内はほぼ満席でした。
最初に頼んだのは「よだれ鶏」と「アボカドのセイロ蒸し」。
「よだれ鶏」は辣油を中心とした、うまくて辛いタレが素晴らしく、蒸し鶏を食べてしまってもなおテーブルに置いたままにしてもらったほど。このタレだけで酒が飲めますし、麺を入れて汁なし担々麵にしてほしいくらいです。
「アボカドのセイロ蒸し」は驚きの味。
脂肪分が15%以上もあり、ねっとりとした食感のアボカドがややあっさりとなり、独特な香りが出てきます。タレのうま味と相まってこんな味になるのかと驚きます。
追加で頼んだ「夫婦肺片」は牛レバーの臭みがなく、ピーナッツなどのナッツにゴマやネギなどをまぶしたタレがまた合っていておいしい。
これに残しておいた「よだれ鶏」のタレをかけるとさらにおいしくなりました。
そして最後に「黄ハタのセイロ蒸し」の残ったタレに卵麺を入れてくれて締めに。
溶け出したハタのうま味が麺に移り、えも言われぬうまさ。3玉分があっという間に消えていきました。
ほかの客が帰っていくなか、手が空いたご主人が客席に来て話しかけてきます。
「孤独のグルメ」でほかの客が食べてむせていた激辛料理は何か尋ねたところ、あれは「水煮牛肉」であり、放送されたのはテイク2(2回目)だったとのこと。1回目はもっと激しくむせ返ってしまい、演じた俳優さんがまったくセリフを言えなくなってしまったんだそうです。
その、匂いまで辛い「水煮牛肉」は夜のメニューということで食べられなかったことが唯一の心残り。また近いうちに訪れてむせ返ってみたいと思いました。
どなたか一緒にチャレンジしませんか?
相変わらず人気の店で予約が取りにくく、駅からも遠いためふらっと行くわけにもいかないのですが、まさに目から鱗が落ちる中国料理の数々。
ぜひ一度訪れてみることをお勧めします。
「豊栄」(茗荷谷・中国料理)
https://tabelog.com/tokyo/A1323/A132302/13194172/