この店の目玉と言えば、なんといっても「ほんこん飯」。
香港で「TAXI飯」と呼ばれる、肉野菜炒めを乗せた飯です。
忙しい運転手が短い時間でかき込めるようにと考案されたというTAXI飯。
日本では提供する店が少なく、私も渋谷の「香港ロジ」でしか見たことはありませんが、食べてみるとなかなかおいしい。
とくにこの店のは味噌と辣油で甘辛く仕上げてあり、目玉焼きがとてもいいアクセント。
しかも野菜だけでなく肉もたっぷりで、さらにごはんも以前ほどではなくなりましたが大盛り。これで720円は非常にコストパフォーマンスが高いと思います。
また、餃子もおいしい。
ふんわりしっとりした皮に、しっかり味のついた餡。
普通のものが、普通においしい「中華」の店です。
だからといってこの店が「普通の店」だと言うわけではありません。
トンカツだのオムライスだのナポリタンといった「洋食」が、フランス料理でもイタリア料理でもないニッポン独自の「洋食」という料理であるように、いわゆる「中華」もまた、中国料理とは違う独自の分野を確立しているんだな、ということをこの店の料理はしみじみと感じさせてくれるのです。
JR高田馬場駅から早稲田通りを東に歩いて5分。「早稲田松竹」という昔ながらの名画座の向かいにあるなんの変哲もない店構えの、さしておいしそうに見えないサンプルが飾られた店。しかしどうしてどうして、こここそが”古き良き中華”を出す店なのです。
その”古き良き”象徴は、定食・丼物に付く味噌汁。
これがまたえらくしっかりした味噌汁で、ちゃんとだしが効いています。具もわかめだったり厚揚げと大根だったりの正統派。あくまでごはんと味噌汁の「友」として中華があるのだ、という揺るぎない信念すら感じられる味噌汁です。
もちろん、おかずもしっかりしています。「魚香茄子」というナスと挽き肉の炒めは、本格派の エッセンスがしっかり入っていながら刺激は控えめ。家庭料理のようなやさしさも兼ね備えた一品で、ごはんとの相性が抜群です。
「木須肉」はキクラゲたっぷりでピリ辛。いつ頼んでも同じ味で、長い歳月をかけて完成された熟練の技を感じさせます。
また日替わりも安くて充実。ある日の「豚レバーの黒酢炒め」は定食で750円とお手ごろながら、皿に山盛り。大量の玉ねぎのなかにラッキョウも入っているのがとても新鮮でした。
何を食べても安心の味。
しっかりした技術に裏打ちされた、”古き良き中華”の店として、周辺住民や学生に愛されているこの店。
普段の昼食、少人数での夕食にわざわざ足を運ぶ価値はある店だと言えるでしょう。
かなりのお勧めです。
「秀永」(高田馬場・中国料理)
https://tabelog.com/tokyo/A1305/A130503/13000105/