【貝汁(大)にお味噌汁を変更する 480円】
この店を紹介するサイトに書いてあった、このオプションの一文で店を決めました。
貝汁に郷愁を覚えたのです。
母親がよく作ってくれたのは貝汁でも味噌を入れない潮汁。しかもグラグラ煮込むので薄く白濁して苦味が出て、子供のときは好きではありませんでした。
ただ、大人になってみるとあの味が妙に懐かしい。遠くふるさとを離れて幾年月。ときたま帰っても母はもう貝汁を作ってはくれません。
帰省したタイミングでその渇望感が私を駆り立てたようです。
福岡空港に降り立ち地下鉄で天神へ。そこから600mも歩いて別の地下鉄に乗り換え、ひと駅の渡辺通駅で降りてすぐ。
行列でした。
どの店に入ってもハズレのない福岡には昔、行列なんてどこにもなかったのですが、東京の“病気”が伝染してきたのでしょうか。
いまやラーメン屋で2時間半待ちがあると聞いて卒倒しました。
行列の最後尾につくと、スタッフのお兄さんがメニューを持ってきます。
ものすごいメニューの多さ。
カツオ、サバ、鯛、マグロ、サワラといった定番は当然として、カマス、ダルマ鯛、イトヨリ、アラカブ、アカムツ、ヒラアジなどまるで仲卸のような品揃え。サーモンやホッケなど福岡でとれない北の魚まで揃えなくてもよかろうにと思ってしまいます。
さらに驚くのはこれらが刺身、焼魚、煮魚などといろんな調理法で提供されていること。何を食べるべきか迷います。
悩みに悩んで選んだのは「ヒラマサ胡麻定食」(1,050円)を「貝汁(大)に変えて」(450円)。
胡麻定食というのは、サバを胡麻醤油であえた福岡の郷土料理「ごまさば」の
ような調理法とのこと。9か月ぶりの福岡ですから、これに賭けてみました。
店内は木の素材を活かした空間で10席ほどの長いカウンターにテーブル席が4つ。この小さな店であれだけの種類の魚を提供することにあらためて驚きます。
450円も差額をとる貝汁は、期待をはるかに上回るものでした。
大きなお椀にあさりが山盛り。いくつあるか数えていましたが、あまりの多さに8個からは数えるのをやめてしまいました。たぶん40個近くはあったと思います。これだけでお腹いっぱいになりそうです。すごすぎる。
見てください、この貝殻の山を。
もちろんあさりのうま味がたっぷりで甘めの味噌との調和も素晴らしく、「貝汁定食」(780円)だけでも充分満足できるのではないかと思いました。
そしてメインの「ヒラマサ胡麻」ですがこれが予想した「ごまさば風」とは違って甘め。
しかしそれがヒラマサの味を活かしていて酒の肴というよりご飯の友として絶妙な味付けでした。
いやあ、やっぱり福岡は豊かです。
福岡にしては高価格帯ではありますがそれ以上の価値はある感じ。とくにヨソから来た人間にとっては肩肘張らずに定食という形で福岡の底力を知ることができる貴重な店と言えるでしょう。
一気に福岡に移住したくなりました。
みなさんも福岡にお越しの際は「真」とともにこの店をぜひ訪れてみてください。
「梅山鉄平食堂」(福岡渡辺通・鮮魚料理)
https://tabelog.com/fukuoka/A4001/A400103/40018886/