タンメンって実は不思議な料理です。
豚バラと野菜を塩胡椒で炒めたあと、鶏ガラなどのスープを投入し煮込み、ゆで上がった麺にかける。普通の汁そばとは作り方が全然違い、むしろ「ちゃんぽん」に近い。しかも中華料理店にあるのに、発祥は日本、それも関東。
九州人の私は、18で上京したあとに初めてタンメンというメニューがあるのを知った記憶があります。
どうも、ちゃんぽんを身近な材料で見よう見まねで作ってみたらこうなった、という感じがします。
さて。研修のために訪れた御殿場。
諸事情もあり、前日から乗り込んで静岡県にしかないハンバーグの店とかいろんな名物をたべようと意気込んでいたのですが、ずっと土砂降りの雨。
くじけて遠出するのをやめ、駅前を徘徊していると、いかにも私好みの古い中華料理店がありました。
スマホで検索してみると、口コミに「酒のつまみに困りません」「馬もつ煮がある」とあるじゃないですか。すばらしい。
ただ、左側の入り口に「フィリピングッズ販売」と書いてあるのに一抹の不安を感じましたが、ほかに選択の余地はない。突撃です。
入ると、奥行きのある細長い店の左に長いカウンターがあり、右の土間にパラパラとテーブルが。
メニューを見るとあれ?麺とご飯ものと単品と…。口コミにあった酒のつまみがありません。戸惑いながらアジア系の女性店員に尋ねると「昔はあったみたいね」。
さっきの口コミを見ると4年前のものでした。がーん。どうやら経営が変わってしまってるようです。
「でも、作る人同じよ」。
店を出ようかとさんざん悩みましたがこの言葉に一縷の望みを賭けて、生と餃子を注文。ダメだったらこれだけで出りゃいいかと覚悟を決めて。
出てきた餃子は揚げ餃子でした。
パリパリっとした皮の中には多めの餡が。なかなかうまいし量も多い。
でも、土地の名物をつまみながらゆっくり飲んで…という当初の目的は果たせそうにありません。
出ようか…でも土砂降りのなかいい店が見つかるという保証もない。
ここは腹をくくって口コミの評価が高かったタンメンを注文することに。
くぅ〜っ、残念。
ところが、出てきたタンメンが驚きのうまさ。
まずスープが半端なく多い。洗面器のようです。
豚バラがけっこうたくさん入ってて、キャベツにもやしににんじんと野菜も豊富ですが、珍しかったのは生椎茸がふんだんに使われてたこと。
いいアクセントとなっていました。
麺は細めの縮れ麺でやわらかめ。
硬麺至上主義の人々からはクレームが来そうですが、本来麺はこんなもの。硬麺を尊ぶ風潮がおかしいのです。
そしてスープは、まさに豚の脂身のうま味とキャベツなどから出る甘みが渾然一体となってまさにタンメンならではの味わい。
素朴で粗野で洗練された感じはありませんが、かなりおいしい方のタンメンとなっていました。やるじゃん。
小さな街をさまよった末に、消去法で選んだような店でしたが、意外にも当たりでした。酒よりも、食事中心にするならおすすめでしょう。
「五竜菜館」(静岡御殿場・中国料理)
https://tabelog.com/shizuoka/A2204/A220402/22005166/