「凪(なぎ)」というと、いまや煮干しラーメンの代名詞のようになっていますが、もともと「凪」は豚骨の店です。
最初に持った店は渋谷のはずれ。
青学の手前の前衛的なデザインのビルの軒先で、コテコテの豚骨ラーメンを出していました。2006年頃のことです。
当時、私も渋谷の反対側のはずれからわざわざ訪れていましたが、本当にうまかった。
コクがあって柔らかいスープは、「なんでんかんでん」や「じゃんがら」を超えるうまさでした。
しかし、豚骨ラーメン全盛期は1998年頃まで。遅れてきた「凪」は評判となっていたものの先行きに不安があったのでしょう。
一方でここの主人は非常に器用で、当時から豚骨以外にいろんな味のスープを作っては日替わりで提供していました。
そこでたどり着いたのが「すごい煮干し」。ちょうどブームに乗る形で人気となり、出す支店はすべて煮干しラーメンの専門店となりました。
私は、流行りに乗って豚骨を捨てたこの店が嫌いになり、ずっと足が遠のいていました。
そしてきょう、仕事で久々にこの店の目の前に来ることがあり、唯一豚骨の専門店として営業を続けてきたこの店に入りました。
やっぱうまいわ。
乳化してとろけるようになったスープは、一段とうま味を増した気がします。
麺も博多正統派の極細ストレート。
そして素晴らしかったのはチャーシュー。肩ロースの大きな塊で作ったそれは見た目も美しく、口当たりもやわらかくまるでローストビーフのよう。このチャーシューを食べるだけでもわざわざ行く価値があるほどです。
すっかり流行に流されたかに見えた「凪」はこの本店だけで豚骨を守り、進化させてきたようです。
高田馬場の名店「ばりこて」が「ばりちゃん」と衣替えして味が落ちてしまったいま、東京で最高の博多ラーメンを出す店としてもっと知られてもいい気がします。
博多ラーメン好きならぜひ。
好きじゃなくともぜひ、このうまさの感動を味わってみてください。
「凪 豚王」(渋谷・ラーメン)
https://tabelog.com/tokyo/A1303/A130301/13024273/