替え玉なし、大盛りなし。
かなり古くからある博多ラーメンの店なのに、必須とも言うべきふたつがこの店にはありません。
店の周りはとにかく獣臭く、体調が悪ければ一瞬むっとくるほど。私がとんこつスープの獣臭さを表現するとき、必ず「大砲ラーメンのような…」という言葉を使いますが、それがまさにこの店なのです。
「大砲ラーメン」というと、とんこつラーメン発祥の地・久留米にも同じ名前の老舗がありますが、ここのはかなり昔に枝分かれしたようで、現在はつながりがないとのこと。細かく言えば「博多大砲ラーメン」が本名のようですが、長く博多で親しまれてきた店の名ですから、あえてここでは大砲とだけ呼びます。
麺は細いストレート麺という博多の標準。腰は弱く、ぷちん、と歯のかみ合わせの部分で切れるようなもろさを持っています。かん水は少なめのよう。
スープはとんこつを沸騰させて煮出したもので、店の周囲に盛大に獣臭を解き放って作られているものの、スープとなったときにはあまり獣臭はしません。
コラーゲンがたっぷり溶け出して軽くとろみがついたスープには点々と透明な脂が浮かび、うまみが凝縮されています。基山の「丸幸ラーメンセンター」とは少し違いますが、草創期のとんこつスープの姿を今にとどめる味です。
小さめのが2枚乗ったチャーシューもまた昔ながら。醤油をベースに煮詰めていったもので、単体ではぱさぱさの食感ですが、ラーメンの上ではスープの味を汚すことのないいい脇役であり、食べる途中でのアクセントとなってくれています。
九州最大の歓楽街・中洲に近く、この春吉一帯もかつては近づきがたいほどのいかがわしさを持った街でしたが、いまは川沿いに屋台が並ぶなどしてかなり雰囲気が変わりました。
飲んだ後の、シメとしての一杯。
博多の人々が親しんできたこのラーメンを、ぜひ一度”博多っ子”気分で味わってみてください。
「大砲ラーメン」(福岡中洲・ラーメン)
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