早稲田にある「らぁ麺 やまぐち」が新たに東陽町に開いた店です。
早稲田が鶏ベースなのに対し、東陽町は「辣式」の名の通り辛い麺。「麻婆まぜそば」がメインです。
2000年ごろ、四川式の「汁なし担々麺」が広島「きさく」で産声を上げ、十数年の歳月をかけてようやくご当地グルメにまで成長しました。そしてその勢いが全国に飛び火しようとしています。この店の「麻婆まぜそば」もその流れと理解すべきでしょう。
ただ、汁なし担々麺との違いは、そぼろ肉がほとんど入ってないこと。四川の担々麺ではひき肉を味噌や辣油などで炒めた肉みそがうま味の源泉ですが、それとは違って純粋な辛味ソースに近い感じです。
注文したのは、「特麻婆まぜそば」(1,100円)。
通常の「麻婆まぜそば」(780円)に温玉、パクチー、チャーシューがセットでついたもの。
「よく混ぜて召し上がってください」と言われるので、底のほうの麺をひっくり返すようにして混ぜ、下にあるたれと上にある麻婆ソースを混ぜ合わせます。まさに汁なし担々麺と同じ。
しかしなぜ早稲田の「やまぐち」が、東陽町に新たな店を開いたのか。東西線で1本とはいえ、20分もかかる離れた場所です。
それはたぶん、単に商圏が重なるのを避けたというよりも、「やまぐち」のイメージがない場所を選んだのかもしれません。早稲田の「やまぐち」はすでに名声を確立しています。その名声があるゆえにまったく新しい味へのチャレンジは別の場所でやりたかったのではないでしょうか。
というのも、もし新しい味に失敗したら「やまぐち」そのものの名前が傷つき、早稲田のほうにも影響があるかもしれません。それに、もし新しい味が受け入れられなかったとしても、商圏が重ならない早稲田の味を持ってくればいいのですから保険にもなります。そういう経営者としての“怖れ”が、遠く離れた場所を選ばせたような気がします。
さて「特麻婆まぜそば」。
麺は太めで軽く縮れてます。もうひとつのこの店のメニュー「塩らぁ麺」の細麺とはまったく別の麺で、むっちりした食感が印象的です。
チャーシューは標準のものがサイコロ状。オプションがいわゆる薄切りチャーシューとなっています。サイコロのほうは柔らかくて臭みがなく香りさえ感じるもの。見た目白いものがありますが、鶏肉のものも混ざっているのでしょうか。
パクチーはざく切りのものがてんこ盛り。ただ、麻婆ソースの味が濃いので、混ぜるとアクセント程度となりあまり気になりません。
「麻婆まぜそば」は麻辣、つまり「麻」が山椒(花椒)の痺れで「辣」が唐辛子の辛さを表すもので最近「カラシビ」と呼ばれる刺激的な味。たしかに標準でけっこう辛いのですが、それでも「麻」が足りない人には卓上にミル付きの容器があって、花椒が。
これをかけると、鼻に抜けるような辛さ(麻)が増します。花椒の成分が揮発性であることを感じられます。
半分以上食べ、やや唇にしびれが出はじめたころを狙って温玉を入れ。少しマイルドにします。
麺を食べ終わり、残った麻婆ソースにご飯を投入。
この食べ方も広島「きさく」から広がったもの。決して上品ではありませんが、うまくて辛いたれをご飯に染み込ませ、最後までありがたくいただきます。
土曜日ということで、午前11:30の開店より15分も前に行ったのですが、意外にも私の前には1人いるだけでした。行列の店として有名ですが、この店の場合むしろ周囲のオフィスに勤める人が多い平日のほうが行列が長いのかもしれません。
鶏スープの端正な味で知られる「やまぐち」が出した新しい味は、けっこうワイルドで濃い味でした。でもこれもまたいい方向だと思います。
もし東陽町に行く機会があったらぜひ。
「らぁ麺 やまぐち 辣式」(東陽町・ラーメン)
https://tabelog.com/tokyo/A1313/A131303/13186890/