刀削麺はあまり食べないとはいえ、こんなにおいしいのは初めてでした。
「山西油泼(ヨウボ―)刀削麺」(750円)。いわゆる油そばです。
小麦粉を練った塊から、刀を使って飛ばすようにして麺をそぎ切り、鍋に入れてゆでる刀削麺。
「山西油泼刀削麺」はその独特の、平べったい三角形の断面をもつ波打つ麺に、甘辛く味付けしたそぼろと水菜、下には辣油と黒酢をベースにしたタレとモヤシがあり、かき混ぜて食べるスタイルです。
表面にサラダ油もかけてあるとのことでぬらぬらした感じですが、ひと口食べてみるとその甘辛さが絶妙。黒酢のコクのあるうま味と酸味、辣油の辛さが非常に合っていて、いわゆる汁なし担々麺とは違った新しいうま味を感じることができます。これは新しい味です。
この味の決め手は黒酢。山西省は黒酢の産地ということで、使い方がうまいようです。
私も自宅の冷蔵庫には黒酢を常備していて、普段からその威力を知っています。野菜炒めに入れるだけでうま味とコクが増して本格的な味になるほか、餃子や焼売にもつけて食べています。
昔から思っていたのですが、餃子に醤油をつけて食べるのは実は日本だけ。これは本場で包子などに黒酢をつけて食べていたのを見て、酢醤油を使ったのが事の始まりではないかと思っています。また、刺身に醤油をつけて食べる文化をそのまま餃子や焼売に当てはめてしまったのではないかとも思います。いいかげん、なんでもかんでも醤油につけて食べるのはやめたほうがいいと思うんですけどね…。
さて、この店があるのは明治通りに面した雑居ビル。副都心線の東新宿駅が目の前にあるのですが、この駅は北に出入口がエレベーター一基のみという欠陥駅。周囲のビルの協力が得られなかったのでしょうが、「駅はあるけど入り口は遠い」という不便な場所にあります。
歩道に面していくつもある店舗の入り口が並ぶのですが、ここのはちょっと独特で、それぞれのガラス張りの入り口からさらに階段があり、1階と地階の店舗に分かれるのです。
この店は地階。1階の店舗も中国料理ですから、いろいろやりにくいでしょうに。
さて、話を刀削麺に戻しましょう。
今回の「山西油泼刀削麺」のほか、この店には「麻辣」「坦々」「塩鶏」などいろんな味の刀削麺があるのですが、それぞれセットではサラダと杏仁豆腐がつき、さらに100円プラスで小チャーハンかごはんが選べます。しかし刀削麺の量がかなり多いのであえて頼まなくてもいいかも。
サラダにあらかじめかけてあるドレッシングも出来合いのものではなく自家製のようで、これもまた甘辛い絶妙な味。黒酢の使い方のうまさがこの店の真骨頂のようです。
炒飯は薄味。作り置きとはいえ丁寧に作られた感じで好感が持てます。
サイドに焼売(410円)を頼みましたが、これがふわふわでしっとりしてておいしかった。
黒酢の産地であり、また中国における麺料理発祥の地として「麺のふるさと」とされる山西省の料理の専門店として、まだまだおいしいものがたくさんありそうなこの店。私もまたちょくちょく訪れたいと思っています。
決して便利な場所とは言いづらい場所にありますが、みなさんもぜひ一度、訪れてみてください。
「山西亭」(東新宿・中国山西料理)
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