優しい味のスープ「グヤーシュ」です。
ハンガリーを代表する料理ですが、ドイツやチェコなど中欧で広く家庭の味として親しまれているそう。角切り牛肉ににんじんやじゃがいもが入り、パプリカパウダーで味付けしてあるので見た目のような辛さはなし。気持ちまでも温かくしてくれる素朴なスープです。
グヤーシュを食べたいと思ったのは、漫画「SPY×FAMILY(スパイファミリー)」のせい。妻役のヨルが料理の特訓の末にたどり着いたのが、彼女の母親が昔作ってくれた「南部シチュー」。このモデルがグヤーシュだというのでぜひ一度食べてみたいと。
ネットで調べてみると、神宮前にハンガリー料理専門店があり、しかもランチでグヤーシュを含むセットがあるとか。もちろん挑戦です。
ところが、重くて大きなバッグを引きずりながら、原宿から15分かけて歩いて来たのに…。
定休日でもないのに店はおやすみ。
地下の玄関ドアを開けて呆然とする私の大きな荷物を見て、迎えた代表の女性が哀れんでくれたのでしょう。急遽、ランチを用意してくれることに。
コロナ禍で通常のランチ営業はやめ、予約があるときだけ営業してるとのこと。
幸いこの日は翌日のディナーに団体の予約が入っており、仕込みでシェフがいるとのことで対応してくれました。感謝感謝、感謝の嵐です。
最初のプチサラダのあと、目的のグヤーシュが登場。
ハンガリー風ロールキャベツのミニコースのひと品ですからスープは小さめ。
かわいらしいカップからかわいらしいスプーンですくって飲むと、熱っ!
表面に脂の薄膜があるため、熱々のまま。
しかし優しくて滋味深い味は心に染み、熱いのがわかっていてもスプーンを動かす手が止まりません。
素直においしい。これだけで充分満足しました。
そしてメインのハンガリー風ロールキャベツ。これもまたパプリカパウダーで風味づけられたスープに浸ってますが本体の味のなんと濃いこと。
肉の他に米も入っていて濃厚さに力を与えているそうですが、切ってみても見えません。しかしこれもまた、再び食べたくなる秀逸の一品でした。
この店、もともとはハンガリー製の高級陶磁器を扱う貿易商だったとか。その縁で在日ハンガリー大使館からハンガリー料理を広めてくれるよう要請を受けてレストランもやるように。
しかしコロナ禍で外食が控えられる中で真っ先に厳しい状況に置かれたのがこうした必需とは言えないマイナーな外国料理でした。
ほかの欧州料理の店が次々と閉まるなか、長い休業を挟みながら耐え、ようやく明かりが見えたのがいま。
この具沢山のスープ「グヤーシュ」の優しい味を、もっともっとたくさんの人々に知ってほしいと思います。
みなさんも予約してぜひ。
「アズ フィノム」(ハンガリー料理・原宿/明治神宮前)
https://tabelog.com/tokyo/A1306/A130601/13046160/