豊洲に移っても、半熟卵入りのクリームシチューの味は変わりません。
とろんとした口当たりは古き良きニッポンの洋食そのもの。
割るとしたたるようにこぼれる半熟卵の黄身。
以前、築地で食べたときにはもっと固かったのですが、今回は絶妙のとろけ加減で感激でした。
豊洲市場に移ってきれいになったこの店。
大きな窓の外にはコロナ禍で立つようになった警備員の姿も見えますが、すっかり明るくなりました。
昔は入り口も狭くて中は薄暗く、近寄りがたい雰囲気もあって市場関係者の憩いの場となっていましたが、いまはすっかり客層が変わってしまった気がします。
それは、取引の場と飲食店街を完全に切り離したせいもあるでしょう。市場関係者はいまどこで憩いのひとときを過ごしているのかむしろ心配になってしまいます。
この店のクリームシチューを知ったのは、かつて放送されていたアニメ「英国一家、日本を食べる」での築地の回。最後の実写部分でこの店が紹介されたときからぜひ味わってみたいと思っていました。
変わらぬ懐かしい味。粘度が高く、とろっとろ。
大きめのニンジンやジャガイモがごろごろ入り、ボリュームがけっこうあります。
この店のもうひとつの名物がヒレカツサンド。
肉厚のヒレ肉のカツにしっかりソースをしみ込ませ、ちょっと厚めのパンで挟んで表面を焼いた素朴なホットサンドイッチ。パンの表面がカリッとさくっとして柔らかいカツからうま味がじんわりと出てくる感じ。シンプル・イズ・ベストという昔よく聞いた言葉を思い出させるサンドイッチです。
テイクアウトも可能ですので、ちょっとした手土産や築地での食事の後に小腹が空いたときなどに重宝します。
そのほかチーズケーキやプリンなど、茶菓子も充実。
アップルチーズパイをコーヒーとともに試してみましたが、あっさりとした味で私の好みでした。
豊洲市場内での食べ歩きに疲れたときにひと休みできる貴重な場所として覚えておくといいでしょう。コーヒーだけでも大丈夫ですので。
しかしふと、築地のあの暗くて独特の雰囲気が懐かしくなります。
ほとんどが常連客で、いまどきなかなか聞けなくなったちゃきちゃきの江戸言葉が飛び交っていたあの空間。時が止まった小宇宙はもう存在しないことが少し悲しくもあります。
(築地時代の写真も混ざっています)
「センリ軒」(豊洲市場・カフェ)
https://tabelog.com/tokyo/A1313/A131307/13227151/