メニューは生姜焼きしかありません。
しかしこれ以上においしい生姜焼きは食べたことないかも、と思えるほど絶品なのです。
ほんとはビーフシチューもあって、ご主人はそっちのほうがお勧めだそうですが、何回通っても店の扉には「本日生姜焼きのみとなります」の札が。がっかりして踵を返すことを繰り返していました。
この店があるのは四谷の谷に下る長い階段の途中。まさに隠れ家のような知られざる店なのですが、上からも下からも行くのが大変。
そこをわざわざ行ってるというのに振られ続けてきたのです。
しかし5回目に至ってもビーフシチューがない。いいかげん諦めて2度目の生姜焼きを食べることにしました。
2回目の生姜焼きもやはりおいしい。
飴色に輝く玉ねぎは柔らかく甘く、醤油のうま味とほのかなしょっぱさが折り重なって絶妙なのです。
豚バラもふわふわして、じゅわっとうま味が染み出してくる感じ。脂身からのうま味も澄んだもので、肉質の高さを感じさせます。やはり最高においしい。
生姜焼きの量も多い上に、レタスとポテトサラダ、ご飯とスープがついて750円は激安です。
でもビーフシチューが食べたかった…。
そこで奥さんに聞いてみました。
ビーフシチューはないんですか?
返事はこうでした。
「いまはお客さんが少ないからやめてるんですよ。ポットで作らなきゃいけないので。でもそろそろ始めましょうかね」
絶品の生姜焼きとビーフシチューを持つこの店であっても、コロナ禍でメニューを減らしていたのです。
もともとグラフィックデザイナーであった夫婦が、夫の引退を機に自宅兼アトリエを改装し喫茶店としてオープンしたのが約10年前。
古伊万里を中心としたアンティークも販売しているそうですが、メニューはコーヒーだけだったので客が来ない。
なので自信のあるメニューだけランチで出すようにしたとのこと。
2品に絞ったことで自信あるメニューの味にさらに磨きがかかったのでしょう。
しかも自宅改装のため家賃がかかっておらず、コスト的にも有利ということで評判を呼び、知る人ぞ知る店となったのです。
プラス150円で飲めるコーヒーのまたおいしいこと。
次はぜひビーフシチューを食べてやるぜ、と心に誓って急な階段を登るのでした。
とにかくこの生姜焼きは驚きのうまさ。
みなさんもぜひ。
「百舌の蔵」(四谷三丁目・カフェ)
https://tabelog.com/tokyo/A1309/A130903/13157337/